早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
一連の薬物に関する事件の捜査本部が置かれている新宿西警察署に連れていくため、龍牙は拓をバイクの後ろに乗せた。
ヘルメットを被る前に彼は後ろに顔を向ける。
『悪い。もうひとつ聞いていいか?』
『なんですか?』
『兄貴の婚約者の名前は?』
『名前……確か、リオ、って聞きました。まだ高校生で、歳は俺のひとつ上だったかな。その子、樋口コーポレーションの前会長の娘なんです』
『樋口コーポレーション……ああ、ゼネコンのか。じゃあフルネームは樋口リオ……』
龍牙の後ろで拓が首を横に振った。拓が動いた振動が伝わる。
『その子の苗字は樋口じゃないです』
『あ? 前会長の娘なんだろ?』
『俺も聞いた話ですけど、訳ありの子らしいです。前会長の愛人の娘だったとか。だから戸籍は樋口家には入っていません。俺のじぃちゃんが樋口コーポレーションの前会長とも、前会長の奥さんの今の会長とも親しくて、その子が生まれた時の事情も承知で兄貴の婚約者に選んだって話です』
(訳ありの子供……。じゃあ片山先生の知り合いは樋口コーポレーションの前会長ってことか)
『兄貴の婚約者が気になるんですか?』
『ちょっとな。メット被れ。行くぞ』
龍牙も拓もヘルメットを装着し、バイクが発進した。
樋口コーポレーション前会長の娘のリオ……その婚約者が相澤直輝。婚約者のリオは相澤がクスリ密売に関わっていることを知っているのだろうか。
(俺が手出しできる範囲じゃねぇが……気にはなるよな)
ヘルメットを被る前に彼は後ろに顔を向ける。
『悪い。もうひとつ聞いていいか?』
『なんですか?』
『兄貴の婚約者の名前は?』
『名前……確か、リオ、って聞きました。まだ高校生で、歳は俺のひとつ上だったかな。その子、樋口コーポレーションの前会長の娘なんです』
『樋口コーポレーション……ああ、ゼネコンのか。じゃあフルネームは樋口リオ……』
龍牙の後ろで拓が首を横に振った。拓が動いた振動が伝わる。
『その子の苗字は樋口じゃないです』
『あ? 前会長の娘なんだろ?』
『俺も聞いた話ですけど、訳ありの子らしいです。前会長の愛人の娘だったとか。だから戸籍は樋口家には入っていません。俺のじぃちゃんが樋口コーポレーションの前会長とも、前会長の奥さんの今の会長とも親しくて、その子が生まれた時の事情も承知で兄貴の婚約者に選んだって話です』
(訳ありの子供……。じゃあ片山先生の知り合いは樋口コーポレーションの前会長ってことか)
『兄貴の婚約者が気になるんですか?』
『ちょっとな。メット被れ。行くぞ』
龍牙も拓もヘルメットを装着し、バイクが発進した。
樋口コーポレーション前会長の娘のリオ……その婚約者が相澤直輝。婚約者のリオは相澤がクスリ密売に関わっていることを知っているのだろうか。
(俺が手出しできる範囲じゃねぇが……気にはなるよな)