早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
立ち上がった亮は部屋の隅に転がるバスケットボールを手にした。
『今からちょっと付き合えよ』
『俺にバスケの相手させる気?』
『たまには違うことやるのも気分転換になっていいだろ』
隼人の返事も聞かずに彼はさっさと部屋を出ていく。隼人は煙草の後始末の確認をしてから重い腰を上げて部屋を出た。
亮の自転車に二人乗りして向かったのは区内の運動公園。この公園にはバスケコートがあり、渡辺がよくバスケの練習で使う場所だ。
ゴールデンウィーク最中の公園には多くの人が集っている。運動公園の一角にはアスレチックの遊具が設置されていて遊具で元気いっぱいに遊ぶ子供達の賑やかな笑い声で溢れていた。
フェンスに囲まれたバスケコートから規則的なボールの音が聞こえてくる。
『あちゃー、先客か? ……おい隼人。あそこにいるの翼じゃねぇ?』
バスケコートに先客がいたことを残念がっていた亮だが、次の瞬間にはコートにいる人物を指差していた。コートには背の高さの違う二人の少年がいた。背の高い方の少年は隼人とよく似た容姿をしている。
『翼だな』
『やっぱり。翼ー!』
亮に声をかけられて振り向いた少年は亮ではなく隼人に目を向けて驚いた顔をしている。
『亮くん! ……ええ? 兄貴がここに来るの珍しいじゃん』
声変わりをして男らしさが増した少年の名前は木村翼。現在中学二年生の隼人の弟だ。
『亮に無理やり連れて来られたんだよ』
『この不健全不良男に健全な汗を流させてやろうと思ってさ』
フェンスの扉を開けて先に亮がコートに入った。観念して隼人もコートに足を踏み入れる。
『誰が不健全だ。それに俺は不良じゃねぇ』
『いや、充分スレた不良の風格漂ってるし。最近は女の上に跨がってしか汗流してないだろ』
亮が投げたバスケットボールを隼人は受け取った。使い込まれた亮の愛用のボールをその場でバウンドさせる。
『充分健全だろ。俺は性欲に忠実なだけ。あれだってベッドの上でのスポーツ……』
『はいはい、ストーップ! 兄貴も亮くんもここには小学生もいるんだからそっち系の話は止めてくれよー』
赤い顔をした翼が身ぶり手振りで必死に二人の話を打ち切ろうとする。
『翼、そっち系の話とはなんだ。大事な子作りの話だ。保健体育と変わらねぇぞ。男と女が合体して射精した精子が卵子に……』
『だーかーら! 兄貴が言うと生々し過ぎて保健体育じゃなくなるんだって! 朝陽が困ってるだろ!』
翼の隣には幼い顔立ちの少年がいて、不思議そうに隼人達を見つめていた。
『今からちょっと付き合えよ』
『俺にバスケの相手させる気?』
『たまには違うことやるのも気分転換になっていいだろ』
隼人の返事も聞かずに彼はさっさと部屋を出ていく。隼人は煙草の後始末の確認をしてから重い腰を上げて部屋を出た。
亮の自転車に二人乗りして向かったのは区内の運動公園。この公園にはバスケコートがあり、渡辺がよくバスケの練習で使う場所だ。
ゴールデンウィーク最中の公園には多くの人が集っている。運動公園の一角にはアスレチックの遊具が設置されていて遊具で元気いっぱいに遊ぶ子供達の賑やかな笑い声で溢れていた。
フェンスに囲まれたバスケコートから規則的なボールの音が聞こえてくる。
『あちゃー、先客か? ……おい隼人。あそこにいるの翼じゃねぇ?』
バスケコートに先客がいたことを残念がっていた亮だが、次の瞬間にはコートにいる人物を指差していた。コートには背の高さの違う二人の少年がいた。背の高い方の少年は隼人とよく似た容姿をしている。
『翼だな』
『やっぱり。翼ー!』
亮に声をかけられて振り向いた少年は亮ではなく隼人に目を向けて驚いた顔をしている。
『亮くん! ……ええ? 兄貴がここに来るの珍しいじゃん』
声変わりをして男らしさが増した少年の名前は木村翼。現在中学二年生の隼人の弟だ。
『亮に無理やり連れて来られたんだよ』
『この不健全不良男に健全な汗を流させてやろうと思ってさ』
フェンスの扉を開けて先に亮がコートに入った。観念して隼人もコートに足を踏み入れる。
『誰が不健全だ。それに俺は不良じゃねぇ』
『いや、充分スレた不良の風格漂ってるし。最近は女の上に跨がってしか汗流してないだろ』
亮が投げたバスケットボールを隼人は受け取った。使い込まれた亮の愛用のボールをその場でバウンドさせる。
『充分健全だろ。俺は性欲に忠実なだけ。あれだってベッドの上でのスポーツ……』
『はいはい、ストーップ! 兄貴も亮くんもここには小学生もいるんだからそっち系の話は止めてくれよー』
赤い顔をした翼が身ぶり手振りで必死に二人の話を打ち切ろうとする。
『翼、そっち系の話とはなんだ。大事な子作りの話だ。保健体育と変わらねぇぞ。男と女が合体して射精した精子が卵子に……』
『だーかーら! 兄貴が言うと生々し過ぎて保健体育じゃなくなるんだって! 朝陽が困ってるだろ!』
翼の隣には幼い顔立ちの少年がいて、不思議そうに隼人達を見つめていた。