早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
今まで平凡に地味に生きてきた私は誰かの恨みを買う覚えはない。心当たりと言うならあの順位表だけ……。
私に教科書を届けてくれた先輩の「気を付けてね」の言葉。言われた時は深く考えもしなかったけどあの言葉が意味していたのはこういうことだったのかな。
嫌がらせは延々と続き、6月中旬になった。
梅雨のじめじめとした空気がまとわりつくこの時期の、雨の匂いが好き。ペトリコールと名付けられた雨が降る前に地面から香るあの匂いが好きなの。
放課後、用務員のおばさんと花壇の手入れをしていた。
「増田さんごめんね。今日は部活じゃないのに手伝ってもらって」
「いいえ。私土いじり大好きですから!」
体操着に着替えて軍手をはめた手で丁寧に花壇を造っていく。家はマンションだから本格的なガーデニングができない。
だから花好きの私は学校中の花壇の手入れができて幸せ。学校の花壇のどこにどんな花が植えてあるか、すべてを把握している生徒は全校生徒の中でも私だけだと胸を張って言える。
将来は花に関係する仕事をしてみたいなぁとぼんやりとした将来像を描いて、花との触れあいを楽しんだ。
花壇の手入れがすべて終わったのは薄曇りの空に太陽が傾き始めた頃だった。
女子トイレで体操着から制服に着替えてトイレを出ると、三人組の知らない女子生徒がトイレの前で待っていた。
「増田奈緒さんだよね。話があるんだけど一緒に来てくれる?」
茶色く染めた髪を巻いた女の子が私を睨んでいる。
このシチュエーションは嫌な予感しかない。その昔、小学校四年生の時もクラスのリーダー格の女の子とその取り巻きにトイレで待ち伏せされて暴言を吐かれた経験がある。
増田奈緒の勘が告げている。絶対に“良い話”ではない!
部活も終わる時間。校舎内に人の気配はほとんどない。
ここは裏門に近い旧校舎。今は生徒会のための生徒会室と特別教室などがあり、職員室からは一番遠くて用がない人は誰も近寄らない。
私に教科書を届けてくれた先輩の「気を付けてね」の言葉。言われた時は深く考えもしなかったけどあの言葉が意味していたのはこういうことだったのかな。
嫌がらせは延々と続き、6月中旬になった。
梅雨のじめじめとした空気がまとわりつくこの時期の、雨の匂いが好き。ペトリコールと名付けられた雨が降る前に地面から香るあの匂いが好きなの。
放課後、用務員のおばさんと花壇の手入れをしていた。
「増田さんごめんね。今日は部活じゃないのに手伝ってもらって」
「いいえ。私土いじり大好きですから!」
体操着に着替えて軍手をはめた手で丁寧に花壇を造っていく。家はマンションだから本格的なガーデニングができない。
だから花好きの私は学校中の花壇の手入れができて幸せ。学校の花壇のどこにどんな花が植えてあるか、すべてを把握している生徒は全校生徒の中でも私だけだと胸を張って言える。
将来は花に関係する仕事をしてみたいなぁとぼんやりとした将来像を描いて、花との触れあいを楽しんだ。
花壇の手入れがすべて終わったのは薄曇りの空に太陽が傾き始めた頃だった。
女子トイレで体操着から制服に着替えてトイレを出ると、三人組の知らない女子生徒がトイレの前で待っていた。
「増田奈緒さんだよね。話があるんだけど一緒に来てくれる?」
茶色く染めた髪を巻いた女の子が私を睨んでいる。
このシチュエーションは嫌な予感しかない。その昔、小学校四年生の時もクラスのリーダー格の女の子とその取り巻きにトイレで待ち伏せされて暴言を吐かれた経験がある。
増田奈緒の勘が告げている。絶対に“良い話”ではない!
部活も終わる時間。校舎内に人の気配はほとんどない。
ここは裏門に近い旧校舎。今は生徒会のための生徒会室と特別教室などがあり、職員室からは一番遠くて用がない人は誰も近寄らない。