早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
 先輩達は賭け事で動いた金額をどうやって調べたの?

『賭け事をしていたグループの生徒達はすでに先生方に氏名を報告済みです。生徒達の名前をこの場で名指しすることは避けますが、処分は個々に先生方が告げます』

高園先輩の言葉に数人の男子生徒が反応を見せた。

『おい生徒会! なに勝手なことしてんだ。お前らにそんな権限あるのか?』

三年生の軍団から聞こえる怒鳴り声やひそひそ話。

『僕達生徒会はこの件について校長先生はじめ、すべての先生方から処理を一任されています。生徒同士の問題を生徒会が対処することは当然の措置だと思いますが?』

怒声にも動じない高園先輩の冷ややかな声が男子生徒に向けられた。

『そいつらが賭けをした証拠はあるのかよっ?』

 高園先輩の圧倒的オーラにひるんでしまった男子生徒に代わって反論する別の男子生徒。

高園先輩は溜息をついてからマイクを入れずに隣の木村先輩と何か話している。木村先輩が頷いた。

『亮ー。スタンバイOK?』

木村先輩が舞台袖に向かって叫んだ。スタンバイOK? の発音が綺麗でかっこいい……! って感激している場合ではない。

『オーケー、オーケー。行くぜー』

 舞台袖から渡辺先輩の声が聞こえた次の瞬間、体育館の照明が落とされた。体育館の窓にカーテンがかかっていたのはこのためだったの?

 壇上にはスクリーンが下ろされ、そこだけが明るい。スクリーンが完全に下りてそこに映しだされたのは数字。
私も、周りの生徒達も唖然としてスクリーンを見つめる。この数字は何?
木村先輩がマイクを握った。

『これはアルファルドと呼ばれるグループの帳簿です。アルファルドの皆さんでも帳簿を見たことがあるのは一部の人間ではないでしょうか? 先ほど高園会長はこの場で名指しはしないと言いましたが、俺は会長ほど優しくないので名前言っちゃいますねー。これで納得しましたか? アルファルド所属の3年7組村山大輔くん?』

木村先輩に名指しされた村上さんってさっき高園先輩に怒鳴ってた人? 三年生の軍団がまたどよめいている。

『まだまだありますよー。亮、次出してくれ』

 木村先輩が舞台袖の渡辺先輩に指示を出す。木村先輩、なんだかとっても生き生きしていて楽しそう。
次に映し出されたのもまた数字が羅列する画像。この画像の説明をするのは高園先輩。

『次にレグルスと名付けられたグループの帳簿です。アルファルドとレグルスは杉澤学院高校の生徒が作ったグループです。この二つのグループがテストの順位で賭け事を行っていました』

アルファルドとレグルス、そんなグループがあることを私は知らなかった。
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