早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
月曜日の全校集会から一夜明けた火曜日の朝。 賭け事をしていたグループの生徒がどのような処分になったのかすでに噂が流れていた。
噂によるとアルファルドとレグルスで中心になって賭け事をしていた三年生数人が退学処分、賭け事に関与した二年生、三年生、両グループ30人程が1週間から2週間の停学処分になった。
停学処分で来週の期末テストに出席できない生徒達は否応なしに夏休みの補習が待っているとか。
「部活の先輩に聞いたんだけど、アルファルドとレグルスって言うのは何年か前に杉澤学院に出来た不良グループで、けっこう問題ばかり起こしてきたみたい」
アルファルドとレグルスのことは情報通の美織ちゃんが教えてくれた。
「でもそのグループの帳簿を手に入れちゃう高園先輩達って何者? って思っちゃう。どうやってあんな物手に入れたんだろ」
亜矢が言う。そうそう、私もそれは思ったよ。
不良グループの帳簿を手に入れてしまう高園先輩と木村先輩、あの人達って何でも出来ちゃうなぁ。
賭け事件は一段落ついたかもしれない。だけど私にはまだ不安材料があった。
切られたスカートの件を亜矢や美織ちゃんに言おうか迷っていた。また心配かけさせちゃうからなぁ……。
スカートは昨日家に帰ってから裂けた部分を縫った。幸い、プリーツ部分とスカートのチェック模様でカモフラージュできて縫った場所も誤魔化せている。
教科書を盗ったのもスカートを切ったのも賭け事件で私を逆恨みして恐喝してきたあの子達の仕業ならもう何も起きないよね?
そういえば、いつも早くに教室に来ている桃子ちゃんがまだ来ていない。もうすぐ朝のHRが始まる時間なのに。
「桃子ちゃん今日お休み?」
「うん。桃ちゃん風邪で休むってさっきメール来たよ」
美織ちゃんが桃子ちゃんからのメールを見せてくれた。桃子ちゃんは一年生の時は無遅刻無欠席の皆勤賞だった。そんな彼女が欠席するなんてよっぽど体調悪いのかな?
始業時間になり、先生から来週の期末テスト日程のプリントが配られて私は現実に引き戻された。テストは来週の火曜日から金曜日までの4日間。
桃子ちゃんの欠席は気になるけど、とにかく今はテスト勉強に集中しなくちゃ。
期末テスト勉強に追われて水曜日、木曜日が過ぎていった。月曜日にスカートが切られてからは物が盗まれることも他の嫌がらせも何も起きなくて、ホッとした気持ちで金曜日の最後の授業を終えた。
放課後、私は花壇の手入れをする至福の時間を楽しんでいた。梅雨時は雨でなかなか手入れができないけど雨上がりの花壇は土もお花も喜んでいる気がする。
ひとりで夢中になって花壇の手入れをしていた私は周囲の状況に気を配ることを忘れていた。
「……きゃっ!」
バシャバシャと聞こえる水の音。濡れた前髪からポタポタと水滴が落ちる。
「え……なに?」
ずぶ濡れになった体操着と自分の頭。何が起きたかわからず呆然と立ち尽くした。
「あははっ! ビショビショじゃん」
「どんくさいねぇ。水かけられる前に気付けよ」
「反射神経無さすぎっ!」
耳障りな笑い声。後ろを振り向くと私を恐喝してきたあの三人組がいた。ショートヘアーの子がバケツを持っている。
噂によるとアルファルドとレグルスで中心になって賭け事をしていた三年生数人が退学処分、賭け事に関与した二年生、三年生、両グループ30人程が1週間から2週間の停学処分になった。
停学処分で来週の期末テストに出席できない生徒達は否応なしに夏休みの補習が待っているとか。
「部活の先輩に聞いたんだけど、アルファルドとレグルスって言うのは何年か前に杉澤学院に出来た不良グループで、けっこう問題ばかり起こしてきたみたい」
アルファルドとレグルスのことは情報通の美織ちゃんが教えてくれた。
「でもそのグループの帳簿を手に入れちゃう高園先輩達って何者? って思っちゃう。どうやってあんな物手に入れたんだろ」
亜矢が言う。そうそう、私もそれは思ったよ。
不良グループの帳簿を手に入れてしまう高園先輩と木村先輩、あの人達って何でも出来ちゃうなぁ。
賭け事件は一段落ついたかもしれない。だけど私にはまだ不安材料があった。
切られたスカートの件を亜矢や美織ちゃんに言おうか迷っていた。また心配かけさせちゃうからなぁ……。
スカートは昨日家に帰ってから裂けた部分を縫った。幸い、プリーツ部分とスカートのチェック模様でカモフラージュできて縫った場所も誤魔化せている。
教科書を盗ったのもスカートを切ったのも賭け事件で私を逆恨みして恐喝してきたあの子達の仕業ならもう何も起きないよね?
そういえば、いつも早くに教室に来ている桃子ちゃんがまだ来ていない。もうすぐ朝のHRが始まる時間なのに。
「桃子ちゃん今日お休み?」
「うん。桃ちゃん風邪で休むってさっきメール来たよ」
美織ちゃんが桃子ちゃんからのメールを見せてくれた。桃子ちゃんは一年生の時は無遅刻無欠席の皆勤賞だった。そんな彼女が欠席するなんてよっぽど体調悪いのかな?
始業時間になり、先生から来週の期末テスト日程のプリントが配られて私は現実に引き戻された。テストは来週の火曜日から金曜日までの4日間。
桃子ちゃんの欠席は気になるけど、とにかく今はテスト勉強に集中しなくちゃ。
期末テスト勉強に追われて水曜日、木曜日が過ぎていった。月曜日にスカートが切られてからは物が盗まれることも他の嫌がらせも何も起きなくて、ホッとした気持ちで金曜日の最後の授業を終えた。
放課後、私は花壇の手入れをする至福の時間を楽しんでいた。梅雨時は雨でなかなか手入れができないけど雨上がりの花壇は土もお花も喜んでいる気がする。
ひとりで夢中になって花壇の手入れをしていた私は周囲の状況に気を配ることを忘れていた。
「……きゃっ!」
バシャバシャと聞こえる水の音。濡れた前髪からポタポタと水滴が落ちる。
「え……なに?」
ずぶ濡れになった体操着と自分の頭。何が起きたかわからず呆然と立ち尽くした。
「あははっ! ビショビショじゃん」
「どんくさいねぇ。水かけられる前に気付けよ」
「反射神経無さすぎっ!」
耳障りな笑い声。後ろを振り向くと私を恐喝してきたあの三人組がいた。ショートヘアーの子がバケツを持っている。