早河シリーズ第一幕【影法師】
プロローグ
──蝉の鳴き声が聞こえる。
『……くん、早河くん』
蝉の大合唱に紛れてどこかで俺の名前を呼ぶ声がした。ああ……この声はアイツだ。
『ねぇ早河くん。この世に神はいると思う?』
夏の日差しが逆光となってこの言葉を発した時のアイツの表情は見えなかった。俺はアイツに何て答えたのだろう。
『もしも本当に神なんてものがいるのなら……』
アイツがそう言った瞬間、蝉達は大合唱を止めた。まるでアイツが今から言おうとしている言葉を待つようにほんの一時の静寂が俺達を包む。
『神とは残酷なお方だ。人が人を殺すのを黙って見ているのだから』
生暖かい風が吹き、木々がざわめいた。厚い雲が太陽を隠して闇が訪れる。
あの瞬間のアイツはどんな顔をしていたのか……。雲が太陽から離れ、再び照り付ける日差しが眩しくて俺は思わず目を伏せた。
蝉達の賑やかな歌声が再開する。
『さようなら』
いつもの調子でアイツは言った。
『また明日な』
“また明日” それがアイツに言った最後の言葉だった。
また明日──。
並んで歩いていた影法師
アイツは今どこにいるんだろう。
『……くん、早河くん』
蝉の大合唱に紛れてどこかで俺の名前を呼ぶ声がした。ああ……この声はアイツだ。
『ねぇ早河くん。この世に神はいると思う?』
夏の日差しが逆光となってこの言葉を発した時のアイツの表情は見えなかった。俺はアイツに何て答えたのだろう。
『もしも本当に神なんてものがいるのなら……』
アイツがそう言った瞬間、蝉達は大合唱を止めた。まるでアイツが今から言おうとしている言葉を待つようにほんの一時の静寂が俺達を包む。
『神とは残酷なお方だ。人が人を殺すのを黙って見ているのだから』
生暖かい風が吹き、木々がざわめいた。厚い雲が太陽を隠して闇が訪れる。
あの瞬間のアイツはどんな顔をしていたのか……。雲が太陽から離れ、再び照り付ける日差しが眩しくて俺は思わず目を伏せた。
蝉達の賑やかな歌声が再開する。
『さようなら』
いつもの調子でアイツは言った。
『また明日な』
“また明日” それがアイツに言った最後の言葉だった。
また明日──。
並んで歩いていた影法師
アイツは今どこにいるんだろう。