早河シリーズ第一幕【影法師】
早河が体勢を整えて貴嶋の死角に入ろうとしたその時だ。
『早河っ……!』
名前を呼ばれると同時に誰かに強く突き飛ばされた。直後に鋭く耳を突き刺す発砲音と何かが倒れる音。
わずか数秒の出来事だった。何が起きたのかわからない早河は目の前で倒れている人物を見て驚愕する。
『香道さん!』
地面に伏している男は早河のバディの香道秋彦。香道のシャツの胸元が赤く染まっていた。
『どうして香道さんがここに……』
右肩の痛みに耐えながら香道を抱き起こした。脈はあるが呼吸は弱い。
{ネズミが一匹紛れ込んでいたのに君は気付いていなかったのかな?}
どこからか貴嶋の声がした。すでに倉庫内に貴嶋の姿はなく、声は天井に取り付けられたスピーカーから漏れていた。
{これは私の賭けだった。君が死ぬか隠れているネズミが君を庇って死ぬか。私は賭けに負けてしまったようだけどね。ネズミのおかげで君が生き残ってしまった}
『貴嶋……! お前……香道さんがいるのを知ってて……香道さんが俺を庇うと……』
すべて貴嶋の掌《てのひら》の上で踊らされていただけだった。
言い様のない怒りと悲しみ、そして絶望が早河を襲う。
{君が生き残ってしまった以上、君との戦いは続くようだ。これも宿命なのかな。まぁこれはこれで面白い}
『ふざけるな!』
早河はスピーカーに向けて怒鳴った。香道の止血をしながら懐の携帯電話を探す。
彼は血まみれの震えた手で着信履歴から上野警部の番号を呼び出した。
今すぐ貴嶋を追いたいが、香道を一刻も早く病院に運ばなければいけない。
{それではいつかまた会おう。今度私達が会うときが親から受け継いだ因縁に決着をつける時だよ}
『待て! 貴嶋!』
貴嶋の名を叫ぶが無音のスピーカーは答えてくれない。
『貴嶋……。お前は……俺が必ず捕まえてやる』
力無く呟く早河の頬は涙で濡れていた。
『早河っ……!』
名前を呼ばれると同時に誰かに強く突き飛ばされた。直後に鋭く耳を突き刺す発砲音と何かが倒れる音。
わずか数秒の出来事だった。何が起きたのかわからない早河は目の前で倒れている人物を見て驚愕する。
『香道さん!』
地面に伏している男は早河のバディの香道秋彦。香道のシャツの胸元が赤く染まっていた。
『どうして香道さんがここに……』
右肩の痛みに耐えながら香道を抱き起こした。脈はあるが呼吸は弱い。
{ネズミが一匹紛れ込んでいたのに君は気付いていなかったのかな?}
どこからか貴嶋の声がした。すでに倉庫内に貴嶋の姿はなく、声は天井に取り付けられたスピーカーから漏れていた。
{これは私の賭けだった。君が死ぬか隠れているネズミが君を庇って死ぬか。私は賭けに負けてしまったようだけどね。ネズミのおかげで君が生き残ってしまった}
『貴嶋……! お前……香道さんがいるのを知ってて……香道さんが俺を庇うと……』
すべて貴嶋の掌《てのひら》の上で踊らされていただけだった。
言い様のない怒りと悲しみ、そして絶望が早河を襲う。
{君が生き残ってしまった以上、君との戦いは続くようだ。これも宿命なのかな。まぁこれはこれで面白い}
『ふざけるな!』
早河はスピーカーに向けて怒鳴った。香道の止血をしながら懐の携帯電話を探す。
彼は血まみれの震えた手で着信履歴から上野警部の番号を呼び出した。
今すぐ貴嶋を追いたいが、香道を一刻も早く病院に運ばなければいけない。
{それではいつかまた会おう。今度私達が会うときが親から受け継いだ因縁に決着をつける時だよ}
『待て! 貴嶋!』
貴嶋の名を叫ぶが無音のスピーカーは答えてくれない。
『貴嶋……。お前は……俺が必ず捕まえてやる』
力無く呟く早河の頬は涙で濡れていた。