早河シリーズ第一幕【影法師】
都内の寺院で香道秋彦の葬儀が行われた。参列者には香道の友人や学生時代の恩師、警察関係者も多く参列している。
所定の席に着席した早河は負傷した右肩を押さえて表情を歪めた。隣にいる小山真紀が早河を気遣う。
「早河さん、無理しないでくださいね」
『ああ。これくらいどうってことない』
貴嶋に撃たれた肩の痛みよりも自分の単独行動によって尊敬する先輩刑事を死なせてしまった痛みの方がはるかに大きい。
焼香の順番が早河に回る。焼香をしている間、鋭い視線が全身に突き刺さるのを感じた。
視線の主はわかっている。桐原恵だ。
彼女は早河が焼香を終えると彼の前に立ち塞がった。
「あなたのせいよっ……! あなたのせいで秋彦は……」
恵が早河の頬を打つ。まだ焼香の列は続いているのに誰も彼もが動きを止めて早河と恵に視線を注いでいた。
『……申し訳ありません』
頭を下げた早河に対して恵の怒りは収まらず、彼女は早河に掴みかかった。
「許さない! 私はあなたを絶対に許さないから! 秋彦を返して……返してよ!」
泣き崩れる恵をなぎさが支える。なぎさは早河を一瞥し、錯乱状態の恵を連れてその場を離れた。
恵に叩かれた頬がヒリヒリと痛む。どうせならもっと殴られてもよかった。
誰かに殴られて罵倒された方がいい。こちらを見ている上野に目礼だけして、早河は寺を後にした。
所定の席に着席した早河は負傷した右肩を押さえて表情を歪めた。隣にいる小山真紀が早河を気遣う。
「早河さん、無理しないでくださいね」
『ああ。これくらいどうってことない』
貴嶋に撃たれた肩の痛みよりも自分の単独行動によって尊敬する先輩刑事を死なせてしまった痛みの方がはるかに大きい。
焼香の順番が早河に回る。焼香をしている間、鋭い視線が全身に突き刺さるのを感じた。
視線の主はわかっている。桐原恵だ。
彼女は早河が焼香を終えると彼の前に立ち塞がった。
「あなたのせいよっ……! あなたのせいで秋彦は……」
恵が早河の頬を打つ。まだ焼香の列は続いているのに誰も彼もが動きを止めて早河と恵に視線を注いでいた。
『……申し訳ありません』
頭を下げた早河に対して恵の怒りは収まらず、彼女は早河に掴みかかった。
「許さない! 私はあなたを絶対に許さないから! 秋彦を返して……返してよ!」
泣き崩れる恵をなぎさが支える。なぎさは早河を一瞥し、錯乱状態の恵を連れてその場を離れた。
恵に叩かれた頬がヒリヒリと痛む。どうせならもっと殴られてもよかった。
誰かに殴られて罵倒された方がいい。こちらを見ている上野に目礼だけして、早河は寺を後にした。