早河シリーズ第二幕【金平糖】
個室の扉が叩かれる。扉の側にこのネットカフェの店員で顔馴染みの河村久志が立っていた。
『シャワー室空いたよ』
「はーい」
シャワー室の空きの知らせを聞き、着替えを詰めたバッグを持って再び個室を出た。
『もうすっかり慣れたって感じだよね』
「なにが? ここに泊まるのが?」
『そう。家出するのも慣れたもんだなって思って』
有紗と河村はシャワー室までの通路を連れ立って歩く。
『さっきあの人と何話してたの?』
「あの人ってタカヒロさんのこと?」
『あの人には関わらない方がいい』
河村の呟きに有紗は怪訝な顔をした。
「なにそれ。意味わかんない」
『あの人がここで何やってるか知ってる?』
「地下のクラブのDJでしょ」
『地下一階ではそうだけどね』
河村の含みのある言い方に有紗は足を止めた。彼女の一歩先で河村も立ち止まる。
「タカヒロさんはMARIAとは関係ない」
『本気でそう思ってる? 地下二階のことは有紗ちゃんも知ってるくせに。君と同じ学校の子がゴロゴロと……』
「黙ってよ……っ!」
思いの外大きな声が出てしまった。有紗は口をつぐんで周囲を見回す。
「……タカヒロさんは関係ないもん。それに私がタカヒロさんと仲良くしたって河村さんには関係ないでしょ」
頬を膨らませて河村の横を通り過ぎた有紗は女性用シャワー室に入った。
『タカヒロなんて遊び人止めておけばいいのに』
使用中の札がかかるシャワー室の鍵が閉まる音と共に、河村は深く溜息をついた。
『シャワー室空いたよ』
「はーい」
シャワー室の空きの知らせを聞き、着替えを詰めたバッグを持って再び個室を出た。
『もうすっかり慣れたって感じだよね』
「なにが? ここに泊まるのが?」
『そう。家出するのも慣れたもんだなって思って』
有紗と河村はシャワー室までの通路を連れ立って歩く。
『さっきあの人と何話してたの?』
「あの人ってタカヒロさんのこと?」
『あの人には関わらない方がいい』
河村の呟きに有紗は怪訝な顔をした。
「なにそれ。意味わかんない」
『あの人がここで何やってるか知ってる?』
「地下のクラブのDJでしょ」
『地下一階ではそうだけどね』
河村の含みのある言い方に有紗は足を止めた。彼女の一歩先で河村も立ち止まる。
「タカヒロさんはMARIAとは関係ない」
『本気でそう思ってる? 地下二階のことは有紗ちゃんも知ってるくせに。君と同じ学校の子がゴロゴロと……』
「黙ってよ……っ!」
思いの外大きな声が出てしまった。有紗は口をつぐんで周囲を見回す。
「……タカヒロさんは関係ないもん。それに私がタカヒロさんと仲良くしたって河村さんには関係ないでしょ」
頬を膨らませて河村の横を通り過ぎた有紗は女性用シャワー室に入った。
『タカヒロなんて遊び人止めておけばいいのに』
使用中の札がかかるシャワー室の鍵が閉まる音と共に、河村は深く溜息をついた。