早河シリーズ第二幕【金平糖】

 ──MARIAを創ったのはちょっとした小遣い稼ぎですよ。うちの学校には親にかまってもらえない淋しがりのお嬢様が多くてね。
ちょっと優しくするだけで簡単にこっちに好意を寄せる女ばかり。

美晴を殺した時期と同じ頃、言い寄ってきた生徒がいました。生徒なんか興味なかったですけどね。
私を抱いてください、なんて言ってきて。お遊びですよ。

その生徒に小遣い稼ぎに売春組織を作らないかと持ちかけたんです。
生徒の名前は飯田未菜。ああ、東堂と一緒にあっさり殺されてしまいましたけどねぇ。

未菜との関係は終わっているので殺されたとしても何の感傷もありません。未菜はとんでもない売春婦でしたよ。
ま、今となっては死人に口なしですが。




 ──ハッキングはカオスのスパイダーから教わりました。幹部クラスの人間ですよ。
スパイダーの正体? 知りません。やりとりはすべてネット上でしたから。

これだけは言えます。スパイダーの専門はクラッキング。奴は一流のブラックハット・ハッカーのクラッカーですよ。

スパイダー以外のカオスの人間で俺が知っている人間はあとはケルベロスでしょうか。
キングの存在は存じていますがお会いしたことはないですね。一度でいいからキングにお会いしてみたかったです。

拳銃はケルベロスから買いました。ネット上のやりとりなのでケルベロスがどこの誰かは知りません。
ケルベロスには殺人のやり方を教わりましたよ。どこをどう刺せば人が死ぬのか、急所はどこか、なかなか面白い殺人講座でしたね。



 ──計画の誤算はあの早河って探偵の介入です。スパイダーがゲームが面白くなるからと早河の参加を促したので……だけど失敗でした。まさか有紗があの探偵に美晴の捜索を依頼するとは。

その上、有紗は早河に惚れたようだ。あの男さえいなければ有紗は俺を見てくれた。
殺すのなら早河を殺せばよかった。今すぐにでも奴を殺しに行きたいですねぇ……

        *


※クラッキング……悪意のあるハッキング。
〈クラッカー〉とはコンピューターシステムに侵入し、悪意を持ってデータを不正に破壊、改ざんする人間を指す。
一般に広く使われる〈ハッカー〉はコンピューターの知識と能力が長けている人間のこと。ハッカーとクラッカーは別物。
正しい意味でのハッカーを〈ホワイトハット・ハッカー〉、クラッカーを〈ブラックハット・ハッカー〉と区別している。
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