早河シリーズ第二幕【金平糖】
12月17日の午前中に山梨の山中で女性の白骨体が発見された。左の手首から先がなく、この白骨体がほぼ高山美晴のものと断定された。
同日午後3時。早河は成田空港のロビーである人を待っていた。ロシアから帰国した高山政行がこちらに歩いてくる。
高山は早河に頭を下げた。
『有紗が色々とご迷惑をおかけしました』
『こちらこそお嬢さんを危険な目に遭わせてしまいました。申し訳ありません』
『早河さんのせいではありません。すべては私の責任です。有紗をまだ子供だと思って本当のことを言わなかった私が悪いんです』
ここにいるのはひとりの父親だ。すべてを受け入れ、すべてを飲み込み、覚悟を決めた父親の姿だ。
『先ほど、山梨で発見された白骨体が美晴さんのものと正式に断定されました。歯形が生前の美晴さんのものと一致したそうです』
『美晴が見つかりましたか……』
静止する早河と高山の前後左右を忙しなく人が行き来する。二人だけが無音の静止画。
彼らはまだその場に立ち尽くしていた。
『美晴の妊娠には驚きました。あの頃、体調が優れないとは言っていたのですが、まさか……』
『妊娠初期の段階だったと判断されています。今となっては確かめようもありませんが』
『正直なところ気持ちが追い付きません。美晴もどこかで生きてさえいてくれたらそれでいいと……』
高山は目を伏せた。産まれることの叶わなかった我が子と最愛の妻を亡くした彼の心情は計り知れない。
『有紗はどうしていますか?』
『香道の家に居ます。食事もとらずにずっと塞ぎ込んでいる状態です』
『美晴に会いに行く前にまずは有紗を迎えに行きます。あの子が私をどう思おうと、有紗は美晴と私の娘です』
高山の言葉に早河は頷く。二人は成田空港の出口に向けて歩き出した。
同日午後3時。早河は成田空港のロビーである人を待っていた。ロシアから帰国した高山政行がこちらに歩いてくる。
高山は早河に頭を下げた。
『有紗が色々とご迷惑をおかけしました』
『こちらこそお嬢さんを危険な目に遭わせてしまいました。申し訳ありません』
『早河さんのせいではありません。すべては私の責任です。有紗をまだ子供だと思って本当のことを言わなかった私が悪いんです』
ここにいるのはひとりの父親だ。すべてを受け入れ、すべてを飲み込み、覚悟を決めた父親の姿だ。
『先ほど、山梨で発見された白骨体が美晴さんのものと正式に断定されました。歯形が生前の美晴さんのものと一致したそうです』
『美晴が見つかりましたか……』
静止する早河と高山の前後左右を忙しなく人が行き来する。二人だけが無音の静止画。
彼らはまだその場に立ち尽くしていた。
『美晴の妊娠には驚きました。あの頃、体調が優れないとは言っていたのですが、まさか……』
『妊娠初期の段階だったと判断されています。今となっては確かめようもありませんが』
『正直なところ気持ちが追い付きません。美晴もどこかで生きてさえいてくれたらそれでいいと……』
高山は目を伏せた。産まれることの叶わなかった我が子と最愛の妻を亡くした彼の心情は計り知れない。
『有紗はどうしていますか?』
『香道の家に居ます。食事もとらずにずっと塞ぎ込んでいる状態です』
『美晴に会いに行く前にまずは有紗を迎えに行きます。あの子が私をどう思おうと、有紗は美晴と私の娘です』
高山の言葉に早河は頷く。二人は成田空港の出口に向けて歩き出した。