早河シリーズ第二幕【金平糖】
タカヒロは空きの個室に美咲を連れて入り、扉を閉めた。部屋にはシングルベッドがひとつだけある。
ベッドを入れてしまうと部屋は足の踏み場もない。だがここにはベッドさえあれば充分だ。
『上に有紗ちゃんがいたよ』
「有紗ぁ? 上ってネットカフェ? クラブ?」
『ネットカフェ。また家出してきたらしい』
「ふーん」
美咲は自ら服を脱いでタカヒロの前で恥じらいもなく裸体を晒す。彼女はベッドに腰かけるタカヒロの足元に膝まずいた。
『気にならねぇの? 友達だろ』
「学校が同じってだけで友達じゃないもん」
美咲の手がタカヒロのジーンズのジッパーを下げた。彼は美咲にされるがまま、にやついて彼女を見下ろす。
『あの子、うちに入れようと思う』
「えー? 本気?」
『超本気。最近メンバー減ったしな。売り上げツートップの瑠璃と眞子が抜けたのは痛手なんだ。有紗ちゃんはその代わり』
二人の少女の名前が出て美咲の動きが止まった。彼女の表情は固い。
「眞子って言えば……さっきまた眞子の客だった熊井って男が来てたよ。30分休憩だけで帰っていったけど、ミサはどこ行ったんだーってわめいてた。あれヤバくない? 眞子を昔の女のミサだって思い込んでるっぽいの。目がイッちゃってた」
『話は聞いてる。まぁヤバくなったら内々で始末つけるさ。熊井を紹介してきた岩田も出禁にしたし、最近めんどくせぇ客しか来ねぇなぁ』
溜息をつくタカヒロの局部に触れ、美咲はひきつった笑みを浮かべて顔を上げた。
「MARIAは私が守るから大丈夫。売り上げだって今のトップの理香先輩をあとちょっとで抜きそうだよ。今度は私がナンバーワンになってタカヒロさんを支えるからね」
美咲の顔が妖艶な微笑に変わった刹那、メスは目の前のオスに食らい付く。
MARIAと呼ばれるここは男と女の楽園
男は聖母マリアを求め、女は居場所を求める。
渋谷を彷徨う少女たちの居場所
ここは〈売春組織 MARIA〉――。
ベッドを入れてしまうと部屋は足の踏み場もない。だがここにはベッドさえあれば充分だ。
『上に有紗ちゃんがいたよ』
「有紗ぁ? 上ってネットカフェ? クラブ?」
『ネットカフェ。また家出してきたらしい』
「ふーん」
美咲は自ら服を脱いでタカヒロの前で恥じらいもなく裸体を晒す。彼女はベッドに腰かけるタカヒロの足元に膝まずいた。
『気にならねぇの? 友達だろ』
「学校が同じってだけで友達じゃないもん」
美咲の手がタカヒロのジーンズのジッパーを下げた。彼は美咲にされるがまま、にやついて彼女を見下ろす。
『あの子、うちに入れようと思う』
「えー? 本気?」
『超本気。最近メンバー減ったしな。売り上げツートップの瑠璃と眞子が抜けたのは痛手なんだ。有紗ちゃんはその代わり』
二人の少女の名前が出て美咲の動きが止まった。彼女の表情は固い。
「眞子って言えば……さっきまた眞子の客だった熊井って男が来てたよ。30分休憩だけで帰っていったけど、ミサはどこ行ったんだーってわめいてた。あれヤバくない? 眞子を昔の女のミサだって思い込んでるっぽいの。目がイッちゃってた」
『話は聞いてる。まぁヤバくなったら内々で始末つけるさ。熊井を紹介してきた岩田も出禁にしたし、最近めんどくせぇ客しか来ねぇなぁ』
溜息をつくタカヒロの局部に触れ、美咲はひきつった笑みを浮かべて顔を上げた。
「MARIAは私が守るから大丈夫。売り上げだって今のトップの理香先輩をあとちょっとで抜きそうだよ。今度は私がナンバーワンになってタカヒロさんを支えるからね」
美咲の顔が妖艶な微笑に変わった刹那、メスは目の前のオスに食らい付く。
MARIAと呼ばれるここは男と女の楽園
男は聖母マリアを求め、女は居場所を求める。
渋谷を彷徨う少女たちの居場所
ここは〈売春組織 MARIA〉――。