早河シリーズ第二幕【金平糖】
多少の疑問は残るが早河は話を先に進める。
『有紗さんが家を出たのが一昨日の日曜日でしたね?』
『そうです。ちょっとした言い合いになって……今までも娘が家を出ることはあったんですが、翌日には戻って来ていたので今回も明日になれば帰ってくるだろうと安易に考えていたんです。でも今日も娘は帰ってきていません。昨日も今日も学校を無断欠席していると学校から連絡がありました。聖蘭学園は今大変でしょう? 有紗の同級生が殺されたりして……。だから余計に心配で』
偶然にも高山有紗も今話題の聖蘭学園の生徒だ。犯人に狙われる危険性がある。
『有紗さんの行き先に心当たりはありますか? 友達の家やよく行く場所などは……』
『恥ずかしながら娘のことはよくわからなくて交遊関係もまったく……。娘が普段どんな場所に行くのかも知らないんです。精神科医としての患者のケアはできても娘の心はまったくわからない。情けないです』
高山は肩を落とした。いくら精神科医でも娘のこととなればどんな父親でもわからなくなって当然だろう。
『わかりました。こちらも出来る限りのことはしてみます』
『よろしくお願いします』
高山は今週末からロシアで行われる学会に出席するため日本を離れる。彼の出張までに娘を見つけ出せればいいが……。
高山が去った後、なぎさはスナップ写真の有紗をデジカメで撮影してデータをパソコンに取り込んだ。人捜しは情報収集が鍵だ。
都内に散らばる早河の仕事仲間たちのメールアドレスに有紗の写真を送り、情報を募る。
早河の片腕的存在の矢野一輝のメールアドレスにも写真を送った。情報屋の彼なら何か掴んで来るかもしれない。
『よし。俺達も行くか』
「はい」
早河となぎさも事務所を出た。日没まで2時間弱。街で人捜しをするには太陽があるうちが都合がいい。
『聖蘭学園があるのは渋谷区、家出した高校生がうろつくのも渋谷、原宿が多い。ひとまずその辺りに行ってみるか』
早河の車は渋谷方面に向かった。なぎさは膝の上に乗せたノートパソコンで渋谷区周辺の地図を表示する。
「高校生の女の子なら駅ビルやショッピングモールに閉店ギリギリまで居座りそうですよね。渋谷なら109やセンター街、あとはネットカフェで時間を潰したり……?」
『俺は馴染みの交番で聞き込みしてくるから、なぎさはそっち頼む。女だらけのビルに入る気はしねぇ』
「了解です。こういう時に女の助手がいて良かったと思いません? 私なら男が入れない場所にも入れますし」
『……まぁな。確かに俺だと女子トイレにも入れないか』
得意げに微笑むなぎさを横目に見て早河は苦笑いを返すしかなかった。
『有紗さんが家を出たのが一昨日の日曜日でしたね?』
『そうです。ちょっとした言い合いになって……今までも娘が家を出ることはあったんですが、翌日には戻って来ていたので今回も明日になれば帰ってくるだろうと安易に考えていたんです。でも今日も娘は帰ってきていません。昨日も今日も学校を無断欠席していると学校から連絡がありました。聖蘭学園は今大変でしょう? 有紗の同級生が殺されたりして……。だから余計に心配で』
偶然にも高山有紗も今話題の聖蘭学園の生徒だ。犯人に狙われる危険性がある。
『有紗さんの行き先に心当たりはありますか? 友達の家やよく行く場所などは……』
『恥ずかしながら娘のことはよくわからなくて交遊関係もまったく……。娘が普段どんな場所に行くのかも知らないんです。精神科医としての患者のケアはできても娘の心はまったくわからない。情けないです』
高山は肩を落とした。いくら精神科医でも娘のこととなればどんな父親でもわからなくなって当然だろう。
『わかりました。こちらも出来る限りのことはしてみます』
『よろしくお願いします』
高山は今週末からロシアで行われる学会に出席するため日本を離れる。彼の出張までに娘を見つけ出せればいいが……。
高山が去った後、なぎさはスナップ写真の有紗をデジカメで撮影してデータをパソコンに取り込んだ。人捜しは情報収集が鍵だ。
都内に散らばる早河の仕事仲間たちのメールアドレスに有紗の写真を送り、情報を募る。
早河の片腕的存在の矢野一輝のメールアドレスにも写真を送った。情報屋の彼なら何か掴んで来るかもしれない。
『よし。俺達も行くか』
「はい」
早河となぎさも事務所を出た。日没まで2時間弱。街で人捜しをするには太陽があるうちが都合がいい。
『聖蘭学園があるのは渋谷区、家出した高校生がうろつくのも渋谷、原宿が多い。ひとまずその辺りに行ってみるか』
早河の車は渋谷方面に向かった。なぎさは膝の上に乗せたノートパソコンで渋谷区周辺の地図を表示する。
「高校生の女の子なら駅ビルやショッピングモールに閉店ギリギリまで居座りそうですよね。渋谷なら109やセンター街、あとはネットカフェで時間を潰したり……?」
『俺は馴染みの交番で聞き込みしてくるから、なぎさはそっち頼む。女だらけのビルに入る気はしねぇ』
「了解です。こういう時に女の助手がいて良かったと思いません? 私なら男が入れない場所にも入れますし」
『……まぁな。確かに俺だと女子トイレにも入れないか』
得意げに微笑むなぎさを横目に見て早河は苦笑いを返すしかなかった。