早河シリーズ第二幕【金平糖】
クラブ〈フェニックス〉は渋谷区道玄坂二丁目の路地裏に建つ五階建てビルの地下一階にある。
夜は妖しげなライトが飛び交うフロアも営業時間外の今は閑散として静まり返り、剥き出しの音楽機器が淋しげに佇んでいた。
タカヒロはクラブのソファーにふんぞり返って座っていた。彼はソファーの肘掛けに頬杖をついて週刊誌の記事を眺めている。
『タカヒロさん、これで三人目ですよ。殺された三人は全員うちのメンバーで、しかも売り上げトップの順に……』
『コウ。黙ってろ』
ドスの効いた声でタカヒロはコウを威圧した。コウが口をつぐむ。
『MARIAの件ではサツが動いてるからな。メンバーはしばらくはここに出入りさせるな』
彼は読んでいた週刊誌を乱雑に放り投げて立ち上がった。
『少し出て来る。何かあれば連絡しろ』
横柄な口調でコウに告げてタカヒロはエレベーターで地上二階に上がった。二階のネットカフェの入り口で高山有紗が手を振っている。
『こら。今日も学校サボって遊んでるな? この不良少女』
彼は作り笑いを浮かべて有紗の頭を小突いた。クラブでコウを威圧した時のタカヒロとはまるで別人だ。それは人間の表と裏。
「タカヒロさんだって不良少女のお誘いを断らなかったよ?」
『有紗ちゃんからのデートのお誘いを断る理由はないよ』
ビルの外に出たタカヒロは当然のように有紗の肩を抱く。
『寒いね。車すぐそこに駐めてあるから早く行こう』
タカヒロのつけている甘い香水の香りを近くに感じて、有紗はこれから待つタカヒロとの甘いひとときに胸を高鳴らせた。
夜は妖しげなライトが飛び交うフロアも営業時間外の今は閑散として静まり返り、剥き出しの音楽機器が淋しげに佇んでいた。
タカヒロはクラブのソファーにふんぞり返って座っていた。彼はソファーの肘掛けに頬杖をついて週刊誌の記事を眺めている。
『タカヒロさん、これで三人目ですよ。殺された三人は全員うちのメンバーで、しかも売り上げトップの順に……』
『コウ。黙ってろ』
ドスの効いた声でタカヒロはコウを威圧した。コウが口をつぐむ。
『MARIAの件ではサツが動いてるからな。メンバーはしばらくはここに出入りさせるな』
彼は読んでいた週刊誌を乱雑に放り投げて立ち上がった。
『少し出て来る。何かあれば連絡しろ』
横柄な口調でコウに告げてタカヒロはエレベーターで地上二階に上がった。二階のネットカフェの入り口で高山有紗が手を振っている。
『こら。今日も学校サボって遊んでるな? この不良少女』
彼は作り笑いを浮かべて有紗の頭を小突いた。クラブでコウを威圧した時のタカヒロとはまるで別人だ。それは人間の表と裏。
「タカヒロさんだって不良少女のお誘いを断らなかったよ?」
『有紗ちゃんからのデートのお誘いを断る理由はないよ』
ビルの外に出たタカヒロは当然のように有紗の肩を抱く。
『寒いね。車すぐそこに駐めてあるから早く行こう』
タカヒロのつけている甘い香水の香りを近くに感じて、有紗はこれから待つタカヒロとの甘いひとときに胸を高鳴らせた。