早河シリーズ第二幕【金平糖】
有紗となぎさが楽しげに談笑している。大人が嫌いと言っていてもなぎさとは打ち解けたようだ。
早河は女二人のお喋りに耳を傾けつつ、テーブルの上に置きっぱなしになっている猫柄の巾着袋に目を留めた。
初めて目にした時から気になっていた。流行り物が好きな女子高生ならば子供っぽい柄の巾着ではなく、もっと洒落たポーチを持つ。
彼女はなぜこの巾着に金平糖を入れて持ち歩いている? 例えば糖の補給が必要な持病があるとは父親からも本人からも聞いていない。
身体の不調に備えるため……ではなさそうだ。
『有紗、どうして金平糖を持ち歩いているんだ?』
「……御守りなの」
何気なく聞いた早河の問いに有紗は一拍置いて答えた。笑っていた有紗の顔から笑みが消える。
「お母さんがよく言ってたんだ。“金平糖は有紗の御守りなのよ。だからいつも持っているのよ”って。この袋も小学校の時にお母さんが金平糖を持ち歩く用に作ってくれたの」
猫柄の巾着袋は母親の手作り。子供っぽいと感じるのも小学生の時に作られた物だったから。謎は解けた。
「金平糖は私の御守りだから寂しくなった時は金平糖を食べると落ち着くんだ」
『そうか……』
冷めたフリをしていても有紗もまだまだ子供だ。どんなに強がっても隠しきれない寂しさ。それを埋めるために有紗には金平糖が必要なのだ。
「ねぇねぇ、なぎささんとも話してたんだけど今日の夕御飯はみんなで焼肉行こうよ!」
『はぁ? 焼肉って俺はまだ仕事が……』
有紗にねだられて早河は顔をしかめる。なぎさを見ると、してやったりな苦笑いを浮かべていた。
「今夜はいいじゃないですか。有紗ちゃんも家出してからちゃんとした物食べてないって言うし、私もまだ買い物行ってなくて有紗ちゃんと二人分の食材が家にないんですよね」
「いいでしょ? 焼肉! 食べたい食べたい食べたい!」
『……はいはい。わかったよ』
ちょっとした、疑似家族のような賑やかな夜だった。
早河は女二人のお喋りに耳を傾けつつ、テーブルの上に置きっぱなしになっている猫柄の巾着袋に目を留めた。
初めて目にした時から気になっていた。流行り物が好きな女子高生ならば子供っぽい柄の巾着ではなく、もっと洒落たポーチを持つ。
彼女はなぜこの巾着に金平糖を入れて持ち歩いている? 例えば糖の補給が必要な持病があるとは父親からも本人からも聞いていない。
身体の不調に備えるため……ではなさそうだ。
『有紗、どうして金平糖を持ち歩いているんだ?』
「……御守りなの」
何気なく聞いた早河の問いに有紗は一拍置いて答えた。笑っていた有紗の顔から笑みが消える。
「お母さんがよく言ってたんだ。“金平糖は有紗の御守りなのよ。だからいつも持っているのよ”って。この袋も小学校の時にお母さんが金平糖を持ち歩く用に作ってくれたの」
猫柄の巾着袋は母親の手作り。子供っぽいと感じるのも小学生の時に作られた物だったから。謎は解けた。
「金平糖は私の御守りだから寂しくなった時は金平糖を食べると落ち着くんだ」
『そうか……』
冷めたフリをしていても有紗もまだまだ子供だ。どんなに強がっても隠しきれない寂しさ。それを埋めるために有紗には金平糖が必要なのだ。
「ねぇねぇ、なぎささんとも話してたんだけど今日の夕御飯はみんなで焼肉行こうよ!」
『はぁ? 焼肉って俺はまだ仕事が……』
有紗にねだられて早河は顔をしかめる。なぎさを見ると、してやったりな苦笑いを浮かべていた。
「今夜はいいじゃないですか。有紗ちゃんも家出してからちゃんとした物食べてないって言うし、私もまだ買い物行ってなくて有紗ちゃんと二人分の食材が家にないんですよね」
「いいでしょ? 焼肉! 食べたい食べたい食べたい!」
『……はいはい。わかったよ』
ちょっとした、疑似家族のような賑やかな夜だった。