早河シリーズ第二幕【金平糖】
副担任でもあり美術部顧問の神田友梨と二人きりの美術室では、友梨が持ってきたチョコレートを二人でこっそり食べながらの作業で楽しかった。
「先生は佐伯先生と結婚するの?」
「えっ……!」
絵筆を床に落とした友梨はわかりやすく動揺している。
「先生、動揺しすぎぃー!」
「どうして私と佐伯先生のこと知ってるの?」
「そんなのバレバレだからクラスのみんな知ってるよ。先生が佐伯先生見る時の目、ポォーっとしてるもん」
「ええっ? そうなの?」
顔を赤くする友梨は同性の有紗から見ても可愛らしく見えた。作業が一段落して二人で片付けに入る。
「佐伯先生優しいよね。いい旦那さんになりそう。結婚式は呼んでね!」
「もう。そんなのまだまだ先よ」
「でも佐伯先生と結婚したいとは思ってるんだよね?」
「そうね。いつかはね。こればかりは一人では決められないことだから」
洗い場で絵筆を洗う友梨の横に並んで有紗も使用した筆や道具の洗浄を行う。
窓の外は日が落ちて暗い。もう6時が近かった。四谷のなぎさの家に帰る頃には6時半を過ぎてしまう。
「ねぇ先生。大人の男の人って高校生は相手にしないもの?」
「人によると思うけど……。高山さんは好きな人いるの?」
「うん。私の好きな人、30歳なの」
早河の年齢は昨日、矢野に学校に送ってもらった時に聞いた。
早河の好きな女のタイプは特にないらしいと矢野は言っていたが、芸能人なら早河は誰が好きかと問われた時に強いて言うなら女優の本庄玲夏だと矢野は答えていた。
(早河さんって本庄玲夏のファン? クールっぽい美人で、スタイルいいスレンダー系。ああいう女が好みなのか……)
友梨は難しい顔で洗い終えた絵筆たちを敷いたタオルの上に並べている。
「30歳ねぇ。先生としてはちょっと心配だな」
「なんで?」
「相手が常識のあるいい人なら問題ないよ。年上の人とのお付き合いも、彼がきちんと親御さんに挨拶をして、親御さんが交際を了承しているのなら私はいいと思う。でもね、年上の男の人にも色々いるのよ。未成年の女の子が騙されて傷付くことも多いから」
友梨の指摘に思い当たることがあった。有紗はタカヒロのことを思い出したが、すぐに気持ちを切り替える。
「そうだよね。けど私の好きな人は大丈夫だよ。騙したり、悪いことする人じゃない。口は悪いけど、とっても優しいんだ」
昨日の早河に抱き締められた時のぬくもりが忘れられない。早河は冬なのに汗だくになって自分のために走り回ってくれた。
本気で怒って本気で心配してくれる人がいることの嬉しさを思い出す。それは有紗がずっと求めていたもの。
隅に片付けた自分のキャンバスを見ているうちに閃いた。忘れないようにメモ帳に書いて、友梨に見せる。
「先生。絵のタイトル決まった」
「……思い出?」
友梨は有紗に見せられたメモの言葉を読み上げる。タイトルは【思い出】。
「この絵はね、私の思い出なの」
キャンバスに描かれているのは赤や黄色、ピンク色、色とりどりの金平糖に囲まれて舞い踊るバレリーナのシルエットだった。
「先生は佐伯先生と結婚するの?」
「えっ……!」
絵筆を床に落とした友梨はわかりやすく動揺している。
「先生、動揺しすぎぃー!」
「どうして私と佐伯先生のこと知ってるの?」
「そんなのバレバレだからクラスのみんな知ってるよ。先生が佐伯先生見る時の目、ポォーっとしてるもん」
「ええっ? そうなの?」
顔を赤くする友梨は同性の有紗から見ても可愛らしく見えた。作業が一段落して二人で片付けに入る。
「佐伯先生優しいよね。いい旦那さんになりそう。結婚式は呼んでね!」
「もう。そんなのまだまだ先よ」
「でも佐伯先生と結婚したいとは思ってるんだよね?」
「そうね。いつかはね。こればかりは一人では決められないことだから」
洗い場で絵筆を洗う友梨の横に並んで有紗も使用した筆や道具の洗浄を行う。
窓の外は日が落ちて暗い。もう6時が近かった。四谷のなぎさの家に帰る頃には6時半を過ぎてしまう。
「ねぇ先生。大人の男の人って高校生は相手にしないもの?」
「人によると思うけど……。高山さんは好きな人いるの?」
「うん。私の好きな人、30歳なの」
早河の年齢は昨日、矢野に学校に送ってもらった時に聞いた。
早河の好きな女のタイプは特にないらしいと矢野は言っていたが、芸能人なら早河は誰が好きかと問われた時に強いて言うなら女優の本庄玲夏だと矢野は答えていた。
(早河さんって本庄玲夏のファン? クールっぽい美人で、スタイルいいスレンダー系。ああいう女が好みなのか……)
友梨は難しい顔で洗い終えた絵筆たちを敷いたタオルの上に並べている。
「30歳ねぇ。先生としてはちょっと心配だな」
「なんで?」
「相手が常識のあるいい人なら問題ないよ。年上の人とのお付き合いも、彼がきちんと親御さんに挨拶をして、親御さんが交際を了承しているのなら私はいいと思う。でもね、年上の男の人にも色々いるのよ。未成年の女の子が騙されて傷付くことも多いから」
友梨の指摘に思い当たることがあった。有紗はタカヒロのことを思い出したが、すぐに気持ちを切り替える。
「そうだよね。けど私の好きな人は大丈夫だよ。騙したり、悪いことする人じゃない。口は悪いけど、とっても優しいんだ」
昨日の早河に抱き締められた時のぬくもりが忘れられない。早河は冬なのに汗だくになって自分のために走り回ってくれた。
本気で怒って本気で心配してくれる人がいることの嬉しさを思い出す。それは有紗がずっと求めていたもの。
隅に片付けた自分のキャンバスを見ているうちに閃いた。忘れないようにメモ帳に書いて、友梨に見せる。
「先生。絵のタイトル決まった」
「……思い出?」
友梨は有紗に見せられたメモの言葉を読み上げる。タイトルは【思い出】。
「この絵はね、私の思い出なの」
キャンバスに描かれているのは赤や黄色、ピンク色、色とりどりの金平糖に囲まれて舞い踊るバレリーナのシルエットだった。