早河シリーズ第二幕【金平糖】
佐伯洋介が有紗と血縁関係にある叔父であり、有紗の本当の父親が佐伯琢磨だとは早河の口から言うべきことではない。
それは今の有紗の父親、高山政行の役割だ。
「佐伯先生は私がお母さんの娘だって知ってたの?」
『先生は知らないと言っていた。佐伯先生はお母さんの結婚後の苗字を知らなかったんだ』
「……そっか」
有紗は軽く頷くと立ち上がった。
「お風呂入ってくるね。早河さん覗かないでよ」
『誰が覗くか』
「へへっ」
舌を出して笑った有紗はキッチンとリビングを隔てる扉の向こうに消えた。
『佐伯と有紗が幼なじみって知って、有紗どう思ったんだろうな』
「驚くのは当然ですよね。それに本当に佐伯先生が有紗ちゃんを美晴さんの娘だと知らなかったのかも」
『そうだな。まだ俺達が掴まなくてはいけない情報があるはずだ。……帰るよ。遅くに悪かった』
ワンルームのなぎさの家には玄関横に洗濯機があり、その隣にはトイレと浴室の扉がある。早河は有紗がいる風呂場の方を見ないようにして玄関で靴を履いた。
『有紗、居候生活楽しんでるみたいだな』
「私も妹ができた気分で楽しいですよ」
『今回の有紗のことはなぎさがいてくれて助かってる。ありがとう。たまには助手も役に立つものだな』
彼はわざと悪態をつき、その言葉の裏の優しさに彼女は気付く。
「いつか、たまにはじゃなくていつも役立つ助手と言わせてやります」
口を尖らしていてもなぎさの目は笑っていた。
そのやりとりを風呂場の扉越しに有紗が聞いていたことを、二人は知らない。
(あれが探偵と助手、か。やっぱり私にはわからない何かがあの二人にはあるんだ)
男と女と。上司と部下と。
でもそれだけじゃない、何かが。
それは今の有紗の父親、高山政行の役割だ。
「佐伯先生は私がお母さんの娘だって知ってたの?」
『先生は知らないと言っていた。佐伯先生はお母さんの結婚後の苗字を知らなかったんだ』
「……そっか」
有紗は軽く頷くと立ち上がった。
「お風呂入ってくるね。早河さん覗かないでよ」
『誰が覗くか』
「へへっ」
舌を出して笑った有紗はキッチンとリビングを隔てる扉の向こうに消えた。
『佐伯と有紗が幼なじみって知って、有紗どう思ったんだろうな』
「驚くのは当然ですよね。それに本当に佐伯先生が有紗ちゃんを美晴さんの娘だと知らなかったのかも」
『そうだな。まだ俺達が掴まなくてはいけない情報があるはずだ。……帰るよ。遅くに悪かった』
ワンルームのなぎさの家には玄関横に洗濯機があり、その隣にはトイレと浴室の扉がある。早河は有紗がいる風呂場の方を見ないようにして玄関で靴を履いた。
『有紗、居候生活楽しんでるみたいだな』
「私も妹ができた気分で楽しいですよ」
『今回の有紗のことはなぎさがいてくれて助かってる。ありがとう。たまには助手も役に立つものだな』
彼はわざと悪態をつき、その言葉の裏の優しさに彼女は気付く。
「いつか、たまにはじゃなくていつも役立つ助手と言わせてやります」
口を尖らしていてもなぎさの目は笑っていた。
そのやりとりを風呂場の扉越しに有紗が聞いていたことを、二人は知らない。
(あれが探偵と助手、か。やっぱり私にはわからない何かがあの二人にはあるんだ)
男と女と。上司と部下と。
でもそれだけじゃない、何かが。