殿下、私に色恋など必要ありません~男勝りな女騎士は、皇太子に溺愛されて困惑する~

「ラローシャ様。オークたちは無謀にも正面から一気に攻めてくるようです。一体何を考えているんだか」

「女がまとめる騎士団だからと侮っているようだな。全く愚かな化け物よ。マルクス。せっかく相手が正面から来てくださっているんだ。こちらも相手してやらねばな!」

「承知!」

「このラローシャを見くびるとは、死ぬ覚悟はできているんだろうなぁ!! 皆のもの! 準備はいいか!」

 私の号令とともに、後ろにいた部下たちは雄叫びをあげる。私は鞘から剣を抜いた。

「全てはユーストリー国安泰ために! かかれぇ!」

 私の率いるダニタルス騎士団は敵を次々と斬り倒していく。
 私は雄叫びを上げながら、ふとあいつの言葉を思い出した。

「ラローシャ。君には僕が必要ないみたいだ。すまないが、君との婚約はなかったことにしてほしい」

 突撃してきたオークをさらりと避けて、斬り込みをいれる。私の顔や鎧はオークの返り血で真っ赤に染まっていた。
 
 全く、勝手な男だ。
 他の女と婚約したいのなら、そう言えばいいじゃないか。
 
 幼い頃に両親が勝手に決めた婚約だ。
 好きにするがいい。
 この私に、色恋など必要ない。
 
 私には、この血生臭い戦場が似合っている。
< 1 / 10 >

この作品をシェア

pagetop