殿下、私に色恋など必要ありません~男勝りな女騎士は、皇太子に溺愛されて困惑する~

「ラローシャ。帰るのかい? 父上から君のドレスについて頼まれたんだけど」

「お仕事を増やしてしまって申し訳ありません」

「いやいや! 君のドレスを選べるなんて光栄だよ。楽しみにしていて」

「殿下。あなたは私を女だとお思いですか?」

「もちろんだよ!」

「あなたは知らないのです。戦場で駆け回り雄叫びを上げながら敵を斬り殺していく私の姿を。あなたは私の本当を知らない」

「君だって、自分の心を知らないんじゃないのかい?」

 私の心を?
 この男は何を言っているのだろうか。

「どうかお幸せに。殿下」

 私はそう言って馬に跨がり、城を後にした。
 なんだって私はあんな余計なことを言ってしまったのだろう。

 ドレスなどいらない。
 キラキラした装飾品も、靴も、煌びやかなもの全てが必要ない。

 なぜなのだろう。
 今、一人戦場を駆け回りたい。
 私はやはり一人が似合っているようだ。

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