殿下、私に色恋など必要ありません~男勝りな女騎士は、皇太子に溺愛されて困惑する~

 ハリット王子が用意してくれたドレスを躊躇いながら身につける。鏡を見ると、なんとも滑稽な姿だと自分で自分を笑ってしまった。

「陛下に誘われたのだ。行くしかあるまい」

 私は久々の馬車を使って、城へ向かう。

「ラローシャ・ハーバース様、ご到着です!」

 執事がそう言うと、すでに会場に来ていた貴族たちが私をじろじろと見ていた。

「ラローシャ騎士団長よ」「あの方も招待されたのね。ドレスまでお召しになって」「珍しいこともあるもんだ」

 私は今夜、壁の花になると決めている。
 人気のない壁を探して腕を組んで時間が過ぎるのを待とう。
 
 そう思って会場の奥へと歩いていた時、私との婚約を破棄したマイケル・アルディーア公爵とぶつかった。

「ラローシャ!」

「公爵! お、お久しぶりです」

 アルディーア公爵の隣を見ると、小柄で可愛らしい令嬢がこちらをじっと見つめていた。

「ラローシャ。紹介するよ。私の婚約者のミレットだ。ミレット挨拶して」

「あなたがラローシャ騎士団長ですね! 私はミレット・スーバルと申します」

 私は一礼してこの場からすぐに離れようとしたが、ミレットは話を終わらせたくないようだ。

「マイケル様はもったいないことをしましたね。こんなにもかっこよくて、雄々しいラローシャ様をお捨てになるなんて」

「ミレット。よしなさい」

 
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