殿下、私に色恋など必要ありません~男勝りな女騎士は、皇太子に溺愛されて困惑する~

「私は君しか見えない。君だけを愛しているんだ」

「殿下……私は……」

 話を続けようとしたその時、会場から叫び声が聞こえた。

「きゃああああ!」

「ユーストリー国の王よ! 覚悟!」

 貴族に扮していた暗殺者がユーストリー王に向けて剣を振り上げる。
 私は瞬時に靴を脱いで、暗殺者に向けて投げつけた。それは見事に手元に当たり、振り上げた剣が宙を舞う。

 私は衛兵の剣を借りて、暗殺者に向けて剣先を向けた。

「まだだ! まだ他にもいる!」

 窓ガラスが割られて、暗殺者たちが次々とやってくる。私は王の前に立ち、彼らに向かって吠えた。

「今宵ラローシャが来ていることを知っていたのか! そうだとしたら愚か者だな!」

 暗殺者は私を見て一瞬ためらったが、また剣を構え直して私に向かってきた。
 
 暗殺者の数はたかがしれていた。
 剣を交えることなく、私は一撃で暗殺者たちを斬り捨てていく。彼らの血が大量に吹き出しては、私のドレスを赤く染めた。

 暗殺者は1人を除いて私の手によって全滅した。
 1人は生かしておく。暗殺を企てたやつを聞き出すためだ。

 暗殺者は衛兵によって、取り押さえられ広間は静まり返る。

「礼をいうぞ。ラローシャ」
「とんでもございません。これが私の仕事ですから」

 血塗れ姿の私を、皆が怯えながら見ている。
 ミレットも、アルディーア公爵も、まるで次は自分が殺られると思っているかのようだ。

「陛下。私の仕事は終わりましたので、この辺で」

 私は足早で舞踏会から出た。

「ラローシャ!」

 ハリット王子が後を追いかけてくる。
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