備えあれば憂いなし
第八話 君がいい
◯ 凛子のアパート - リビング
凛子とシンはリビングのソファに座っている。凛子は少し悩んだ様子で、話を始める。
凛子(ため息混じりに):「実は……婚約破棄したの。この前、雨の中で泣いてたのも、その話し合いの途中で抜け出してきたから」
シンは静かに頷きながら、凛子の話に耳を傾けている。
凛子:「一応、家具家電とか家賃は折半になってて、家具は私がもらうことになったんだけど……」
シンは少し眉をひそめ、考え込む。
シン:「家具は凛子さんのものになるんだ……でもさ、アパートを出る必要はないんじゃない?」
凛子(困った様子で):「それが、家賃が高すぎて私一人じゃ到底払えないの」
凛子が家賃の額を教えると、シンは目を見開き、考え込む。
シン(少し驚きながら):
「うーん、それは確かに……一人じゃ厳しいね。二人でも、ちょっと無理そうか」
凛子は苦笑しながら、少し自己嫌悪に陥る。
凛子(自嘲気味に):「私って、馬鹿みたいでしょ? こんなこと言って……」
シンはすぐに首をふる。
シン:「いや、そんなこと思わないよ。……誰だって、こういう時あるし」
凛子はシンの言葉に少し驚き、そしてどこか救われたような気分になる。
凛子(小さく息を吐いて):「……これから、どうしたらいいのか全然わからなくて。こんな女と付き合うのってしんどいよ?」
シンは真剣な表情で凛子を見つめ、少し間を置いて言った。
シン:「俺はさ……付き合いたいと思ってる。凛子さんは?」
凛子は一瞬驚き、シンの言葉に目を見開く。心の中では戸惑いと迷いが交錯する。
凛子(ためらいながら):「……私なんかで、いいの?」
シンは真っ直ぐな目で凛子を見つめ、はっきりとした声で答える。
シン:「『私なんか』じゃないよ。俺が、凛子さんがいいって思ったから」
凛子はその言葉に動揺し、頬が少し赤くなる。
凛子:「……どうして? どうして私なんか……」
シン少し照れくさそうに
シン:「一目惚れだったんだよ」
凛子(驚いて):「……一目惚れ?」
シン:「うん、なんかね。会った瞬間に『この人いいな』って思った。理由なんてなくて、ただ……好きになったんだ」
凛子はシンの言葉に驚きつつも、彼の真っ直ぐな気持ちが伝わってくるのを感じ、少し心が温まる。
シン:「過去のことなんて、気にしなくていいよ。俺は今の凛子さんが好きなんだ。だから……付き合いたいと思ってる。凛子さんはどう?」
凛子はシンの真剣な表情に戸惑いながらも、彼の誠実さを感じ取り、少し考え込む。そして、彼の気持ちを受け入れる決意を固める。
凛子(小さな声で):「……いいの?」
シンは少し笑って、軽やかに返す。
シン:「だーかーらー、いいって言ってるでしょ!」
凛子はシンの明るい返答に、自然と笑みがこぼれる。
シン(急に思いついたように):「それならさ、とりあえず俺んちに引っ越す? 1LDKだけど、二人で住めばなんとか……手狭にはなるけど」
凛子:「……うん」
シン:「俺んちの家電処分すればいいのかな」
凛子:「処分するのにもお金かかるよね」
シン:「いや、地元掲示板に頼めば欲しい人がタダで持ってってくれるし、なんならここでいらんやつももってってくれるよ?」
凛子:「なるほど……」
凛子はシンの前向きな提案に少し考え込む。そして、シンと一緒に新しいスタートを切ることを決意する。
凛子(小さく微笑んで):「……よろしくお願いします」
シン:「こちらこそ」
シンは満足そうに頷く。