備えあれば憂いなし

第九話 過去が引っ張る

◯シンのリビング

あれから二ヶ月後。
引っ越しもあっという間に終わりシンの部屋に真新しい家具家電が置かれている。
そのせいか少し手狭に感じる。

凛子はパートの後買い物して、芸人仕事終わりのシンと合流する。荷物はシンが持って帰る。
そして凛子がキッチンで冷蔵庫を開ける。

凛子(冷蔵庫を見ながら):「あっ、しまった……白菜、もう買ってた」

眉をひそめて、自分に軽くため息をつく

凛子(心の中):「行く前にちゃんと確認したのに……また忘れちゃった。私、ほんと昔から抜けてるんだよね……」

シンが背後から近づき、覗き込む

シン:「白菜……あったね。」

凛子:「そ、そうね……ほほほ……」

凛子(心の声):「まずい……シンくんにバレた……。前にだって、風呂洗剤をもう買ってあったのにまた買っちゃったし、味噌も何度も忘れて味噌汁が作れなかったことも……」

シン(優しく微笑んで):「大丈夫だよ、凛子さん。白菜が多いならいろんな料理に使えるじゃん!」

凛子:「え……?」

シン
「白菜と豚肉のミルフィーユ鍋なら、丸ごと一個使えるし、キャベツ高いでしょ?だから代わりに刻んでお好み焼きにしても美味しいんだよ」

凛子、安心したように微笑む

凛子(心の声):「シンくん、ありがとう。やっぱり優しいな……。雅司だったらこんなミスをしたらネチネチ言われてたなぁ」

(回想シーンに切り替わる)

◯回想シーン - 元彼との同棲時代

部屋で凛子と雅司が向かい合っている。彼は眉を顰める。

雅司:「またミスか?痛恨のエラーだよ、凛子」

凛子が俯いている

雅司:「疲れてるだのなんだの、そんなの言い訳にならないよ! 君は簡単な仕事しかしてないのに……これはエラーだ、君の頭はバグってるんだよ」

と、ネチネチ言われて凛子は言い返せずただ耐える
 
◯リビングに戻る

凛子が現実に戻り、シンを見つめる。神妙な顔をしてる凛子。

凛子(心の声):「シンくんは……違う。彼はこんな私でも優しく受け入れてくれる……」

シンが凛子を抱きしめる

シン:「凛子さん、大丈夫だよ。そんなことで落ち込む必要なんてないってを」

凛子:「……うん、ありがとう、シンくん。」



◯リビングでの会話

食事が終わり、ソファでテレビを見ながらくつろいでいる二人

シン:「あ、そうだ凛子さん。来週、名古屋の祭りで事務所の野外ライブがあるんだけど……よかったら見に来てくれない?」

凛子:「えっ、名古屋まつりで?(シンの事務所のスケジュール見るが載ってない)うそうそっ」

シン:「明日夜情報公開だから。事務所初の野外ライブ。先輩のピンピンズが賞レースに残ったから今がチャンス!って事務所の社長が乗り切ったらしくって。俺らにもチャンスがきたってわけよ。」

シンドヤ顔。

凛子:「すっごいじゃん……前説からの一気に野外ライブかぁ」
シン:「しかも今回は前説じゃなくてちゃんとステージに立てるから……楽しみ」
凛子:「うんうん、私も。すごいじゃん、シンくん」
シン:「凛子さんと付き合ってから風向き変わった、絶対」

それを言われて凛子はドキッとする。
凛子:「そ、そうかなぁ……何も特別なことしてないし」
するとシンが凛子にキスをする。
シン:「してんじゃん」
凛子は顔を真っ赤にする。動揺する。
凛子:「た、た、た、たしかにーして、してるけど!」
シン:「揶揄ってごめん。でもマネージャーの勘鋭くてさ……ばれたっぽい」
凛子:「えっ」
シン:「んーまぁ、とりあえず……僕は凛子さんと付き合ってから調子いい! 凛子さんは?」
凛子:「……う、うん」


シンは凛子をソファーに押し倒す。
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