【改稿版】罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~【電子書籍化進行中】
34 もう一人仲間ができました
ゼダ様に護衛をされながら馬車の待合室に行くと、ケイトに出会った。ケイトは私を見つけるなり嬉しそうに駆け寄ってくる。
「リナリア、今から帰るの?」
「うん、ケイトも? いつもより遅いのね」
「そうなの、図書館で面白い本を見つけて、今まで夢中で読んでしまって……」
そこでようやくケイトは、側にいるゼダ様に気がついたようだ。「あっ」と呟くと慌てて会釈する。
「ゼダ様、失礼いたしました。リナリアとお話し中でしたか?」
ケイトの質問に、ゼダ様は「いいえ」と答えると「私はこれで失礼します」と礼儀正しく頭を下げた。
ゼダ様の後ろ姿を見つめながらケイトが「ゼダ様ってすごく姿勢が綺麗よね」と呟く。確かにゼダ様は、いつでも背筋が伸びていてキビキビと動いていた。
「ケイトって、いつもゼダ様のことを褒めるのね」
そう言うと、ケイトは「そうだったかしら?」と首をかしげた。
「そうよ。確か、前もゼダ様のことを、『真面目そうで素敵』って言っていたわよ」
美少女ケイトは、ほぼ初対面の男子生徒に告白されて、よく困っている。そのせいで、なんとなくケイトは男性が苦手なイメージがあったけど、ゼダ様に対しては違うようだ。
私は腕を組みながら考えた。
確かに真面目で誠実そうなゼダ様ならケイトを安心して任せられるわ。両殿下の護衛をしているくらいだから、将来も安泰よね。しかも、強いんだからケイトを変な男からも守ってくれそう。ゼダ様、合格!
我ながら『何目線?』と言いたいところだけど、大切な友達には幸せになってほしい。
以前の私は『ケイトにはもっと華やかな外見の男性が似合うのに』と思っていたけど、華やかなシオンが平凡な私を心の底から愛してくれていると知って私の考えも変わった。
重要なのは、相手と外見の釣り合いが取れているのかではなく、どれほどお互いに相手を大切にできるかということなのだと今なら分かる。
ケイトも、シオンを幸せにするために協力してくれないかしら?
そうすればケイトとゼダ様の接点ができるし、三人ならシオンを本当に幸せにする道がもっと早く見つかるかもしれない。
時間が遅いせいか、馬車の待合室には私とケイト以外の生徒の姿はない。
「ケイト、あのね。聞いてほしい話があるんだけど、今、少しいい?」
ケイトは待合室のベンチに座った。
「もちろん! なんでも聞くわよ」
私は隣に座りケイトを見つめた。美しい琥珀色の瞳が、私の言葉の続きを待っている。
「あのね、私とシオン殿下のことなんだけど……」
シオンが『王室からの除名を望んでいること』は、気軽に話して良いことではない。でも、ケイトなら誰にも言わないと分かっている。もし何か事情があって、ケイトが誰かに秘密を漏らしてしまっても、それはケイトのせいではなく、この話をした自分が悪い。
私が覚悟の上でケイトに、シオンとローレル殿下の本当の関係を話すと、ケイトはポカンと口を開けた。そして、予想外に「やっぱりね」と呟く。
「え?」
驚く私に、ケイトは「そうだと思っていたわ!」と白い頬を興奮でピンク色に染めた。
「ケイト、どういうこと?」
「ローレル殿下のことよ! 私、前にもリナリアに言ったと思うけど、昔から変な人に絡まれやすくて、危ない人はなんとなく雰囲気で分かるのよ。だから、ローレル殿下のこと、ずっと怪しいと思っていたの」
「そうなの⁉」
ケイトは、「ローレル殿下のことは、あまりにも不敬すぎて今まで誰にも言えなかったけど、今日、あなたに言えてスッキリしたわ」とため息をついた。
言われてみればケイトは、私と同じで、誰もがお近づきになりたがるローレル殿下に近づこうとしない珍しい女子生徒だった。
「それに、リナリアには悪いけど、シオン殿下も、その、ちょっと……」
言葉を濁しているけど、ケイトの表情には苦悩が浮かんでいる。
「だから、あなたたちが付き合っていると聞いてから少し心配だったの。でも、シオン殿下は、そういう事情があったのね。なるほどね」
ケイトは、しきりに納得している。
「あなたがシオン殿下を好きだと言うなら、私も全力で応援するわ」
「ケイト、今まで心配かけてごめんね。うん、シオン殿下はとてもお優しいわよ」
ケイトは「そうでしょう? シオン殿下は、リナリアにだけは、お優しいと思うわ」と『だけ』はを強調しながら可憐に微笑んだ。
私が「どういうこと?」と尋ねると、ケイトは言いにくそうにうつむく。
「その、シオン殿下とは、サジェスお兄様の件で、いろいろあって……」
そういえば、私がサジェスに押し倒された件はシオンに任せたんだった。
その件についてシオンに尋ねると、「きちんと対処したよ」としか言わなかったし、サジェスは騎士になるという夢を叶えて転校していったので、任せたことをすっかり忘れてしまっていた。
「もしかして、シオン殿下と揉めてしまったの?」
ケイトは慌てて首を振る。
「いいえ、シオン殿下の判断は素晴らしかったわ。私も、私の家族も納得しているし、父は『シオン殿下はウワサとはまったく違う優秀なお方だ』って言っていたくらい」
「良かった……」
「でも、サジェスお兄様の件がなくても、それ以前から、ときどき学園内でお見かけするシオン殿下からの圧が……得体の知れない圧がすごくて……。正直、怖かったわ」
「圧⁉」
「今思えば、いつもリナリアの側にいる私が、うらやましかったのね。謎が解けたわ」
「そんなことは……あるかも……。シオン殿下は、学園内に入学したときからずっと私のことを見守ってくださっていたらしいから」
私はシオンの危ない一面も知っているので、ケイトの言葉を否定できなかった。ケイトは「ずっと見守っていたって……」と青ざめている。
「リナリア。そ、それって本当に大丈夫なの?」
「え? うん」
「あなたが良いなら良いけど……。困ったことがあったらいつでも相談してね?」
「ありがとう」
ケイトは「サジェスお兄様といい、シオン殿下といい、リナリアに寄ってくる男は、どうしてこうも……」と小声でブツブツ言っている。
「ケイト?」
ケイトは両手を自身の頬に添えながら「でもねぇ」とため息をついた。
「サジェスお兄様やシオン殿下のお気持ちも、少しは分かる気がするの。だって、リナリアって、すごくまっすぐで誰にでも優しいから。闇を抱えている人からすれば、光り輝いて見えるのよね」
「闇を抱えている? サジェスも?」
ケイトは小さく頷いた。
「サジェスお兄様は、子どものころの私を守ってくれていたわ。確かに優しいお兄様だった。だけど、お兄様は友達をうまく作れない私を見下してもいた。私、そういうのは言われなくても、なんとなく分かるのよ。サジェスお兄様は、女性嫌いというより、女性を下に見ていた。それがサジェスお兄様の心の闇。だから、あんなバカなことをして……本当にごめんなさい」
「あなたのせいじゃないわ。それに、サジェスにも謝ってもらったからもういいの。忘れて」
「うん……ありがとう」
ケイトは目尻に滲んだ涙をそっと指でぬぐった。
「シオン殿下なんて、サジェスお兄様よりさらに心の闇が深いわよね。リナリアが眩しくて仕方ないんじゃないかしら?」
「それを言うなら、私から見れば、あなたやシオン殿下のほうが美しくて、よっぽど眩しく見えるわ」
「あのねリナリア。私やシオン殿下は、確かに外見だけしか見ていない人たちには、好感を持たれやすいかもね。でもね、あなたの場合は、身の内から滲み出る美しさと言うか……」
ケイトの琥珀色の瞳が私を見つめている。
「あなたはとても綺麗よ。シオン殿下が執着するのも納得だわ」
ケイトの言葉に驚きながら私は微笑んだ。
「ありがとう」
「信じてくれるの?」
「うん、以前の私だったら、そんな話、絶対に信じられなかったけど、シオン殿下が……シオンが信じさせてくれたの」
フワッとケイトが微笑んだ。
「そうなのね! その話を聞いたら、ますますあなたたちを応援したくなったわ」
「頼りにしてるね」
「リナリア、今から帰るの?」
「うん、ケイトも? いつもより遅いのね」
「そうなの、図書館で面白い本を見つけて、今まで夢中で読んでしまって……」
そこでようやくケイトは、側にいるゼダ様に気がついたようだ。「あっ」と呟くと慌てて会釈する。
「ゼダ様、失礼いたしました。リナリアとお話し中でしたか?」
ケイトの質問に、ゼダ様は「いいえ」と答えると「私はこれで失礼します」と礼儀正しく頭を下げた。
ゼダ様の後ろ姿を見つめながらケイトが「ゼダ様ってすごく姿勢が綺麗よね」と呟く。確かにゼダ様は、いつでも背筋が伸びていてキビキビと動いていた。
「ケイトって、いつもゼダ様のことを褒めるのね」
そう言うと、ケイトは「そうだったかしら?」と首をかしげた。
「そうよ。確か、前もゼダ様のことを、『真面目そうで素敵』って言っていたわよ」
美少女ケイトは、ほぼ初対面の男子生徒に告白されて、よく困っている。そのせいで、なんとなくケイトは男性が苦手なイメージがあったけど、ゼダ様に対しては違うようだ。
私は腕を組みながら考えた。
確かに真面目で誠実そうなゼダ様ならケイトを安心して任せられるわ。両殿下の護衛をしているくらいだから、将来も安泰よね。しかも、強いんだからケイトを変な男からも守ってくれそう。ゼダ様、合格!
我ながら『何目線?』と言いたいところだけど、大切な友達には幸せになってほしい。
以前の私は『ケイトにはもっと華やかな外見の男性が似合うのに』と思っていたけど、華やかなシオンが平凡な私を心の底から愛してくれていると知って私の考えも変わった。
重要なのは、相手と外見の釣り合いが取れているのかではなく、どれほどお互いに相手を大切にできるかということなのだと今なら分かる。
ケイトも、シオンを幸せにするために協力してくれないかしら?
そうすればケイトとゼダ様の接点ができるし、三人ならシオンを本当に幸せにする道がもっと早く見つかるかもしれない。
時間が遅いせいか、馬車の待合室には私とケイト以外の生徒の姿はない。
「ケイト、あのね。聞いてほしい話があるんだけど、今、少しいい?」
ケイトは待合室のベンチに座った。
「もちろん! なんでも聞くわよ」
私は隣に座りケイトを見つめた。美しい琥珀色の瞳が、私の言葉の続きを待っている。
「あのね、私とシオン殿下のことなんだけど……」
シオンが『王室からの除名を望んでいること』は、気軽に話して良いことではない。でも、ケイトなら誰にも言わないと分かっている。もし何か事情があって、ケイトが誰かに秘密を漏らしてしまっても、それはケイトのせいではなく、この話をした自分が悪い。
私が覚悟の上でケイトに、シオンとローレル殿下の本当の関係を話すと、ケイトはポカンと口を開けた。そして、予想外に「やっぱりね」と呟く。
「え?」
驚く私に、ケイトは「そうだと思っていたわ!」と白い頬を興奮でピンク色に染めた。
「ケイト、どういうこと?」
「ローレル殿下のことよ! 私、前にもリナリアに言ったと思うけど、昔から変な人に絡まれやすくて、危ない人はなんとなく雰囲気で分かるのよ。だから、ローレル殿下のこと、ずっと怪しいと思っていたの」
「そうなの⁉」
ケイトは、「ローレル殿下のことは、あまりにも不敬すぎて今まで誰にも言えなかったけど、今日、あなたに言えてスッキリしたわ」とため息をついた。
言われてみればケイトは、私と同じで、誰もがお近づきになりたがるローレル殿下に近づこうとしない珍しい女子生徒だった。
「それに、リナリアには悪いけど、シオン殿下も、その、ちょっと……」
言葉を濁しているけど、ケイトの表情には苦悩が浮かんでいる。
「だから、あなたたちが付き合っていると聞いてから少し心配だったの。でも、シオン殿下は、そういう事情があったのね。なるほどね」
ケイトは、しきりに納得している。
「あなたがシオン殿下を好きだと言うなら、私も全力で応援するわ」
「ケイト、今まで心配かけてごめんね。うん、シオン殿下はとてもお優しいわよ」
ケイトは「そうでしょう? シオン殿下は、リナリアにだけは、お優しいと思うわ」と『だけ』はを強調しながら可憐に微笑んだ。
私が「どういうこと?」と尋ねると、ケイトは言いにくそうにうつむく。
「その、シオン殿下とは、サジェスお兄様の件で、いろいろあって……」
そういえば、私がサジェスに押し倒された件はシオンに任せたんだった。
その件についてシオンに尋ねると、「きちんと対処したよ」としか言わなかったし、サジェスは騎士になるという夢を叶えて転校していったので、任せたことをすっかり忘れてしまっていた。
「もしかして、シオン殿下と揉めてしまったの?」
ケイトは慌てて首を振る。
「いいえ、シオン殿下の判断は素晴らしかったわ。私も、私の家族も納得しているし、父は『シオン殿下はウワサとはまったく違う優秀なお方だ』って言っていたくらい」
「良かった……」
「でも、サジェスお兄様の件がなくても、それ以前から、ときどき学園内でお見かけするシオン殿下からの圧が……得体の知れない圧がすごくて……。正直、怖かったわ」
「圧⁉」
「今思えば、いつもリナリアの側にいる私が、うらやましかったのね。謎が解けたわ」
「そんなことは……あるかも……。シオン殿下は、学園内に入学したときからずっと私のことを見守ってくださっていたらしいから」
私はシオンの危ない一面も知っているので、ケイトの言葉を否定できなかった。ケイトは「ずっと見守っていたって……」と青ざめている。
「リナリア。そ、それって本当に大丈夫なの?」
「え? うん」
「あなたが良いなら良いけど……。困ったことがあったらいつでも相談してね?」
「ありがとう」
ケイトは「サジェスお兄様といい、シオン殿下といい、リナリアに寄ってくる男は、どうしてこうも……」と小声でブツブツ言っている。
「ケイト?」
ケイトは両手を自身の頬に添えながら「でもねぇ」とため息をついた。
「サジェスお兄様やシオン殿下のお気持ちも、少しは分かる気がするの。だって、リナリアって、すごくまっすぐで誰にでも優しいから。闇を抱えている人からすれば、光り輝いて見えるのよね」
「闇を抱えている? サジェスも?」
ケイトは小さく頷いた。
「サジェスお兄様は、子どものころの私を守ってくれていたわ。確かに優しいお兄様だった。だけど、お兄様は友達をうまく作れない私を見下してもいた。私、そういうのは言われなくても、なんとなく分かるのよ。サジェスお兄様は、女性嫌いというより、女性を下に見ていた。それがサジェスお兄様の心の闇。だから、あんなバカなことをして……本当にごめんなさい」
「あなたのせいじゃないわ。それに、サジェスにも謝ってもらったからもういいの。忘れて」
「うん……ありがとう」
ケイトは目尻に滲んだ涙をそっと指でぬぐった。
「シオン殿下なんて、サジェスお兄様よりさらに心の闇が深いわよね。リナリアが眩しくて仕方ないんじゃないかしら?」
「それを言うなら、私から見れば、あなたやシオン殿下のほうが美しくて、よっぽど眩しく見えるわ」
「あのねリナリア。私やシオン殿下は、確かに外見だけしか見ていない人たちには、好感を持たれやすいかもね。でもね、あなたの場合は、身の内から滲み出る美しさと言うか……」
ケイトの琥珀色の瞳が私を見つめている。
「あなたはとても綺麗よ。シオン殿下が執着するのも納得だわ」
ケイトの言葉に驚きながら私は微笑んだ。
「ありがとう」
「信じてくれるの?」
「うん、以前の私だったら、そんな話、絶対に信じられなかったけど、シオン殿下が……シオンが信じさせてくれたの」
フワッとケイトが微笑んだ。
「そうなのね! その話を聞いたら、ますますあなたたちを応援したくなったわ」
「頼りにしてるね」