【改稿版】罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~【電子書籍化進行中】
41 王家に呼び出されました
数日後。
私がこれからしようとしていることをすでに知っているローレル殿下が何か仕掛けてくるかもしれないと警戒していたけど、何も起こらず平和な日々が過ぎていた。
今日の夕方ごろに、父が王都に着くらしい。
ちょうど学園が休みだった私は、父の到着を待ちながら、母とのんびりお茶をしていた。
そのとき、急に王家からの使者が来て、今すぐ国王陛下に謁見(えっけん)するように言われる。
迎えに来た王家の豪華な馬車に、私たちは半ば無理やり押し込められたような形になった。
母は「準備をする間も与えないなんて、いったいなんなのかしら?」と不満を漏らしている。
「王家の横暴さは今に始まったことではないけど、この扱いはさすがにないわ。でもまぁ、アルベルトが来るまでは大人しくしておきましょう」
「そうですね……。お父様が早く王都に着くといいんですが」
母はタウンハウスのメイドに「アルベルトがついたら、王宮に来るように伝えて」としっかり伝言してから出てきている。
「お母様。急に王宮に呼び出されたのはきっと私のせいです。私がローレル殿下に抗議しようとしているから……」
「あなたが悪いんじゃないわ。王家がノース家に危害を加えることはできないから安心しなさい。それくらい今のノース家の影響力は強いから」
「はい」
王宮に着くと、案内人が謁見室まで私と母を案内した。
この扉の向こうに国王陛下が……。
開けられた扉の先には壇上があり、その上に王座が見える。
王座に座る国王陛下の横には王妃様。シオンとローレル殿下の姿はない。
少し離れたところに立っている貴族男性を見た母が「宰相までいるわ」と呟いた。
「リナリア。大丈夫、私がついているわ」
母は、震える私の手を優しく握ってくれる。
「はい」
謁見室に足を踏み入れると、王族の他にも王子の護衛であるゼダ様やギアム様、王宮の騎士たちがいることに気がついた。
なんだか空気がピリピリしている。
国王陛下に向かって、私は母と一緒に淑女の礼(カーテシー)をした。
「楽にするがいい」
国王陛下の声で、私たちは礼をやめて顔を上げる。
「そなたらを呼び寄せたのは、過去に王族がノース家にしたことを詫びたいと思ってな」
過去の王族がノース家にしたこと……それは数十年前に起こった、第二王子の婚約者だったマリア・ノースへの裏切り。
今まで頑なにノース家に謝罪をしてこなかった王家が、今になってこんなことを言うなんて何かおかしい。
国王陛下は「今回のことは、正式に王家からの謝罪として貴族たちに周知させよう」
宰相が母に書簡を差し出した。それを受け取った母は、書簡に目を通して眉をひそめる。
私が小声で「なんて書いてあるんですか?」と尋ねると、母は「ふざけたことを」と呟いた。
「王家が過去のことを正式にノース家に謝罪するから、ローレル殿下について知ったことを口外するな、ですって」
国王陛下は「悪い話ではあるまい?」と言うけど、別に今さら謝ってほしいとも、王家と親しくなりたいとも思っていないノース家からすれば、喜ぶようなことではない。
それに、ローレル殿下の性格の悪さをなんとかしたいのに、ローレル殿下について黙っていろと言われても……。
母は「この件は私では判断しかねます。夫が来るまで返事を待っていただけないでしょうか?」と告げた。
「それには及ばん。今すぐノース伯爵代理として夫人がここで署名をするといい。わしが許可する」
「無理だといったら?」
隣の母を見ると口元は笑っているけど、激しい怒りが怖いくらい伝わってくる。
「娘の恋人が痛い目に遭うだろうな」
国王陛下の言葉に、私と母は顔を見合わせた。
私の恋人? ……まさかシオンが痛い目に遭うってこと⁉
母は私に「なるほど。ノース家が正式にローレル殿下を抗議する前に、王家が先手を打ったというわけね」と囁く。
「ノース家には簡単に手が出せないから、シオン殿下を人質にした、と?」
私は両手を握りしめた。
「……許せないです」
「本当に」
堂々とした母が「シオン殿下は、今どちらに?」と尋ねると、王妃様が「今はローレルと剣の鍛錬をしていますよ」と微笑む。
その言葉と共に、カーテンが開かれた。謁見室の窓から見える場所で、シオンとローレル殿下が剣を構えている。
国王陛下が、「ローレルは完璧だ。シオンでは勝てない。ノース家が今すぐこの条件を飲まなければ、シオンは大怪我するかもしれんな」と言うと、王妃様がクスクスと笑う。
「あら、怪我だけで済むでしょうか? この国でローレルに勝てるのは天才剣士と名高いギアムとゼダだけですよ」
「そうであったな」
何が楽しいのか国王陛下も王妃様も微笑んでいる。
その様子を見た私は シオンが言っていた『ローレルに完璧でいてほしい人たち』の中に、国王陛下と王妃様も含まれていたのだとようやく気がついた。
こんな人たちが両親だなんて……。こんな人たちに囲まれて育ったシオンは、どれほどつらかっただろう。
シオンを助けないと。
謁見室から出ようとする私をゼダ様が止めた。
「離してください! このままではシオンが‼」
「落ち着いてください。大丈夫ですから」
「大丈夫って?」
ゼダ様は困ったようにギアム様を見た。ギアム様も「大丈夫です」としか言わない。
そうしている間に、シオンとローレル殿下の勝負が始まってしまった。
「シオン、逃げて‼」
ここからいくら叫んでもシオンには届かなかった。
私がこれからしようとしていることをすでに知っているローレル殿下が何か仕掛けてくるかもしれないと警戒していたけど、何も起こらず平和な日々が過ぎていた。
今日の夕方ごろに、父が王都に着くらしい。
ちょうど学園が休みだった私は、父の到着を待ちながら、母とのんびりお茶をしていた。
そのとき、急に王家からの使者が来て、今すぐ国王陛下に謁見(えっけん)するように言われる。
迎えに来た王家の豪華な馬車に、私たちは半ば無理やり押し込められたような形になった。
母は「準備をする間も与えないなんて、いったいなんなのかしら?」と不満を漏らしている。
「王家の横暴さは今に始まったことではないけど、この扱いはさすがにないわ。でもまぁ、アルベルトが来るまでは大人しくしておきましょう」
「そうですね……。お父様が早く王都に着くといいんですが」
母はタウンハウスのメイドに「アルベルトがついたら、王宮に来るように伝えて」としっかり伝言してから出てきている。
「お母様。急に王宮に呼び出されたのはきっと私のせいです。私がローレル殿下に抗議しようとしているから……」
「あなたが悪いんじゃないわ。王家がノース家に危害を加えることはできないから安心しなさい。それくらい今のノース家の影響力は強いから」
「はい」
王宮に着くと、案内人が謁見室まで私と母を案内した。
この扉の向こうに国王陛下が……。
開けられた扉の先には壇上があり、その上に王座が見える。
王座に座る国王陛下の横には王妃様。シオンとローレル殿下の姿はない。
少し離れたところに立っている貴族男性を見た母が「宰相までいるわ」と呟いた。
「リナリア。大丈夫、私がついているわ」
母は、震える私の手を優しく握ってくれる。
「はい」
謁見室に足を踏み入れると、王族の他にも王子の護衛であるゼダ様やギアム様、王宮の騎士たちがいることに気がついた。
なんだか空気がピリピリしている。
国王陛下に向かって、私は母と一緒に淑女の礼(カーテシー)をした。
「楽にするがいい」
国王陛下の声で、私たちは礼をやめて顔を上げる。
「そなたらを呼び寄せたのは、過去に王族がノース家にしたことを詫びたいと思ってな」
過去の王族がノース家にしたこと……それは数十年前に起こった、第二王子の婚約者だったマリア・ノースへの裏切り。
今まで頑なにノース家に謝罪をしてこなかった王家が、今になってこんなことを言うなんて何かおかしい。
国王陛下は「今回のことは、正式に王家からの謝罪として貴族たちに周知させよう」
宰相が母に書簡を差し出した。それを受け取った母は、書簡に目を通して眉をひそめる。
私が小声で「なんて書いてあるんですか?」と尋ねると、母は「ふざけたことを」と呟いた。
「王家が過去のことを正式にノース家に謝罪するから、ローレル殿下について知ったことを口外するな、ですって」
国王陛下は「悪い話ではあるまい?」と言うけど、別に今さら謝ってほしいとも、王家と親しくなりたいとも思っていないノース家からすれば、喜ぶようなことではない。
それに、ローレル殿下の性格の悪さをなんとかしたいのに、ローレル殿下について黙っていろと言われても……。
母は「この件は私では判断しかねます。夫が来るまで返事を待っていただけないでしょうか?」と告げた。
「それには及ばん。今すぐノース伯爵代理として夫人がここで署名をするといい。わしが許可する」
「無理だといったら?」
隣の母を見ると口元は笑っているけど、激しい怒りが怖いくらい伝わってくる。
「娘の恋人が痛い目に遭うだろうな」
国王陛下の言葉に、私と母は顔を見合わせた。
私の恋人? ……まさかシオンが痛い目に遭うってこと⁉
母は私に「なるほど。ノース家が正式にローレル殿下を抗議する前に、王家が先手を打ったというわけね」と囁く。
「ノース家には簡単に手が出せないから、シオン殿下を人質にした、と?」
私は両手を握りしめた。
「……許せないです」
「本当に」
堂々とした母が「シオン殿下は、今どちらに?」と尋ねると、王妃様が「今はローレルと剣の鍛錬をしていますよ」と微笑む。
その言葉と共に、カーテンが開かれた。謁見室の窓から見える場所で、シオンとローレル殿下が剣を構えている。
国王陛下が、「ローレルは完璧だ。シオンでは勝てない。ノース家が今すぐこの条件を飲まなければ、シオンは大怪我するかもしれんな」と言うと、王妃様がクスクスと笑う。
「あら、怪我だけで済むでしょうか? この国でローレルに勝てるのは天才剣士と名高いギアムとゼダだけですよ」
「そうであったな」
何が楽しいのか国王陛下も王妃様も微笑んでいる。
その様子を見た私は シオンが言っていた『ローレルに完璧でいてほしい人たち』の中に、国王陛下と王妃様も含まれていたのだとようやく気がついた。
こんな人たちが両親だなんて……。こんな人たちに囲まれて育ったシオンは、どれほどつらかっただろう。
シオンを助けないと。
謁見室から出ようとする私をゼダ様が止めた。
「離してください! このままではシオンが‼」
「落ち着いてください。大丈夫ですから」
「大丈夫って?」
ゼダ様は困ったようにギアム様を見た。ギアム様も「大丈夫です」としか言わない。
そうしている間に、シオンとローレル殿下の勝負が始まってしまった。
「シオン、逃げて‼」
ここからいくら叫んでもシオンには届かなかった。