【改稿版】罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~【電子書籍化進行中】
42【シオンSide】もうあきらめない
「シオン。剣を構えろよ」
急に私を呼び出したローレルは、そんなことを言いだした。
「なんのつもりだ?」
「今、リナリアが王宮に呼び出されているよ」
リナリアと聞いた私は、とっさにその場から走り去ろうとしたが、ローレルに道を塞がれてしまう。
「シオンのためにリナリアがいろいろ動いていただろう? それを王家に密告した生徒がいるんだよ。アマリアス商会を運営するノース家に抗議されたら、王家でも握りつぶせないからね。先手を打つみたいだよ。おまえは交渉を有利にするための人質」
剣を構えたローレルは、ニヤニヤ笑っている。
「陛下には『シオンとの勝負に勝て、多少の怪我はさせてもいい』と言われたよ。相変わらずクズ親だね」
「元からあれが親であることなんて期待していない」
私も剣を構えて、ローレルとの間合いをはかる。
「相手がシオンなら、適当にやっても勝てるけど、せっかくだから何か賭けようか。そうだな……勝ったほうの願いをひとつ叶えることにしよう。私が勝ったらリナリアを貰うよ」
一方的な言葉を聞いて、カッと私の頭に血が上る。
「今までどうしてリナリアみたいなどこにでもいそうな女に、シオンが入れ込んでいるのか分からなかった。でも、私もリナリアの良さが分かったよ」
ローレルがリナリアの魅力に気がついてしまった。なんとなく、いつかはこうなる気がしていた。だから、私はリナリアを守るために今まで必死に剣術を磨いてきたのかもしれない。
深呼吸すると頭に上っていた血がスッと下がっていく。
ここで負けるわけにはいかない。両親からの関心も愛情も、周囲からの期待や好意、尊敬、そのすべてはローレルに向けられていた。だから、すべてをあきらめて私は今まで生きて来た。
幼いころは、ローレルさえいなければと何度思ったか分からない。
私のこれまでの人生は、ローレルに操られていた。でも、リナリアと一緒に幸せになると決めた私は、あきらめることをやめた。だって、リナリアは私に夢のような未来を話してくれたから。
愛する女性と結婚して、子どもを産み育てる。そんな素晴らしい未来を、ローレルごときに潰されてたまるか!
「ローレル。リナリアに手を出したら、おまえを殺す」
「できるものならやってみなよ。一度も私に勝てたことない愚かなシオン」
素早く踏み込み剣を振り下ろす。ローレルに弾かれたけど、ゼダほどの勢いはない。
学園に入る前なら、最初の一撃で私は剣を飛ばされて、首元に刃を突きつけられていた。
それなのに、今はローレルの動きが鈍く見える。
毎日毎日、剣を振り鍛錬を続けたことは、どうやら無駄ではなかったようだ。リナリアと付き合えるようになってからは、もっと強くなりたいと願い、リナリアと別れたあとゼダの猛特訓を受けていたのも良かったかもしれない。
ローレルは、ゼダやギアムより強くない。
そのことで私は『ローレルはすべてにおいて優秀だが、その道を極めている者には勝つことができない』ということに気がついた。だったら、私がゼダやギアムほど強くなればローレルに勝てるということ。
私は剣を振り下ろしながら、「ローレル。剣を持ったのはいつぶりだ?」と聞いた。
少し焦るような表情で、私の剣を交わしたローレルは「いつだったかな?」と笑う。
「なるほど。産まれながらに完璧と称えられるローレルにでも、努力し続ければ追いつけるんだな」
「何を⁉」
渾身の力を込めた一撃をくらい、ローレルは剣を取り落とした。拾おうと膝をついたローレルに、私は刃を突きつける。
「リナリアはあきらめろ。そして、これ以上私に関わるな。それ以外のすべては、おまえの好きにすればいい」
ガックリとうつむいたローレルの肩が揺れる。
「ふ、ふふ。ははは」
顔を上げたローレルは笑っていた。
「これがっ! この感情が『悔しい』か‼ 子どものころのシオンがよく泣いていた気持ちが、ようやく分かった。これか‼」
ローレルは両手を上げた。
「私の負けだ。今後一切、リナリアとシオンには手を出さない」
「おまえの言葉など信じられるか」
「あとから公的な契約書を作ってやるよ。もし、約束を破って作らなかったら今みたいに私に剣を突きつけたらいい」
「……」
私の意見が生まれて初めて通った。ずっと望んでいたことなのに、なんだかあっけなさ過ぎて実感が湧かない。
立ち上がったローレルは腕を組んだ。
「実は私は、学園を卒業する前に面白いことが起こらなかったら、この国を滅ぼそうと思っていたんだ」
バカバカしい話だが、ローレルならやりかねないと思った。
「でも、リナリアに心底嫌われて、下に見ていたおまえに負けて、味わったことのない感情を味わって最高に面白かったよ」
「国はもう滅ぼさないのか?」
こんな国なんて、どうなっても構わないが、リナリアやノース家に迷惑がかかるのは嫌だ。
「そうだな……。せっかく二人に楽しませてもらったから、これからは、おまえたちのためにいい国でも作るか」
「勝手にしろ」
私は剣を鞘に収めると、謁見室に向かい走り出した。そのあとをなぜかローレルもついてくる。
リナリアは大丈夫だろうか?
謁見室に入ると、リナリアが駆け寄って来た。
「シオン! 怪我していないですか⁉」
「リナリアは⁉ 君こそ大丈夫⁉」
「はい、私は大丈夫です」
リナリアの無事を確認したら一気に緊張が解けた。
「良かった……」
「シオンも、無事に良かったです」
リナリアの瞳には涙が滲んでいる。私を心配して泣いてくれるなんて……。幸せ過ぎて、胸がどうしようもなく熱くなった。
急に私を呼び出したローレルは、そんなことを言いだした。
「なんのつもりだ?」
「今、リナリアが王宮に呼び出されているよ」
リナリアと聞いた私は、とっさにその場から走り去ろうとしたが、ローレルに道を塞がれてしまう。
「シオンのためにリナリアがいろいろ動いていただろう? それを王家に密告した生徒がいるんだよ。アマリアス商会を運営するノース家に抗議されたら、王家でも握りつぶせないからね。先手を打つみたいだよ。おまえは交渉を有利にするための人質」
剣を構えたローレルは、ニヤニヤ笑っている。
「陛下には『シオンとの勝負に勝て、多少の怪我はさせてもいい』と言われたよ。相変わらずクズ親だね」
「元からあれが親であることなんて期待していない」
私も剣を構えて、ローレルとの間合いをはかる。
「相手がシオンなら、適当にやっても勝てるけど、せっかくだから何か賭けようか。そうだな……勝ったほうの願いをひとつ叶えることにしよう。私が勝ったらリナリアを貰うよ」
一方的な言葉を聞いて、カッと私の頭に血が上る。
「今までどうしてリナリアみたいなどこにでもいそうな女に、シオンが入れ込んでいるのか分からなかった。でも、私もリナリアの良さが分かったよ」
ローレルがリナリアの魅力に気がついてしまった。なんとなく、いつかはこうなる気がしていた。だから、私はリナリアを守るために今まで必死に剣術を磨いてきたのかもしれない。
深呼吸すると頭に上っていた血がスッと下がっていく。
ここで負けるわけにはいかない。両親からの関心も愛情も、周囲からの期待や好意、尊敬、そのすべてはローレルに向けられていた。だから、すべてをあきらめて私は今まで生きて来た。
幼いころは、ローレルさえいなければと何度思ったか分からない。
私のこれまでの人生は、ローレルに操られていた。でも、リナリアと一緒に幸せになると決めた私は、あきらめることをやめた。だって、リナリアは私に夢のような未来を話してくれたから。
愛する女性と結婚して、子どもを産み育てる。そんな素晴らしい未来を、ローレルごときに潰されてたまるか!
「ローレル。リナリアに手を出したら、おまえを殺す」
「できるものならやってみなよ。一度も私に勝てたことない愚かなシオン」
素早く踏み込み剣を振り下ろす。ローレルに弾かれたけど、ゼダほどの勢いはない。
学園に入る前なら、最初の一撃で私は剣を飛ばされて、首元に刃を突きつけられていた。
それなのに、今はローレルの動きが鈍く見える。
毎日毎日、剣を振り鍛錬を続けたことは、どうやら無駄ではなかったようだ。リナリアと付き合えるようになってからは、もっと強くなりたいと願い、リナリアと別れたあとゼダの猛特訓を受けていたのも良かったかもしれない。
ローレルは、ゼダやギアムより強くない。
そのことで私は『ローレルはすべてにおいて優秀だが、その道を極めている者には勝つことができない』ということに気がついた。だったら、私がゼダやギアムほど強くなればローレルに勝てるということ。
私は剣を振り下ろしながら、「ローレル。剣を持ったのはいつぶりだ?」と聞いた。
少し焦るような表情で、私の剣を交わしたローレルは「いつだったかな?」と笑う。
「なるほど。産まれながらに完璧と称えられるローレルにでも、努力し続ければ追いつけるんだな」
「何を⁉」
渾身の力を込めた一撃をくらい、ローレルは剣を取り落とした。拾おうと膝をついたローレルに、私は刃を突きつける。
「リナリアはあきらめろ。そして、これ以上私に関わるな。それ以外のすべては、おまえの好きにすればいい」
ガックリとうつむいたローレルの肩が揺れる。
「ふ、ふふ。ははは」
顔を上げたローレルは笑っていた。
「これがっ! この感情が『悔しい』か‼ 子どものころのシオンがよく泣いていた気持ちが、ようやく分かった。これか‼」
ローレルは両手を上げた。
「私の負けだ。今後一切、リナリアとシオンには手を出さない」
「おまえの言葉など信じられるか」
「あとから公的な契約書を作ってやるよ。もし、約束を破って作らなかったら今みたいに私に剣を突きつけたらいい」
「……」
私の意見が生まれて初めて通った。ずっと望んでいたことなのに、なんだかあっけなさ過ぎて実感が湧かない。
立ち上がったローレルは腕を組んだ。
「実は私は、学園を卒業する前に面白いことが起こらなかったら、この国を滅ぼそうと思っていたんだ」
バカバカしい話だが、ローレルならやりかねないと思った。
「でも、リナリアに心底嫌われて、下に見ていたおまえに負けて、味わったことのない感情を味わって最高に面白かったよ」
「国はもう滅ぼさないのか?」
こんな国なんて、どうなっても構わないが、リナリアやノース家に迷惑がかかるのは嫌だ。
「そうだな……。せっかく二人に楽しませてもらったから、これからは、おまえたちのためにいい国でも作るか」
「勝手にしろ」
私は剣を鞘に収めると、謁見室に向かい走り出した。そのあとをなぜかローレルもついてくる。
リナリアは大丈夫だろうか?
謁見室に入ると、リナリアが駆け寄って来た。
「シオン! 怪我していないですか⁉」
「リナリアは⁉ 君こそ大丈夫⁉」
「はい、私は大丈夫です」
リナリアの無事を確認したら一気に緊張が解けた。
「良かった……」
「シオンも、無事に良かったです」
リナリアの瞳には涙が滲んでいる。私を心配して泣いてくれるなんて……。幸せ過ぎて、胸がどうしようもなく熱くなった。