【改稿版】罰ゲームで私はウソの告白をされるそうです~モブ令嬢なのに初恋をこじらせているヤンデレ王子に溺愛されています~【電子書籍化進行中】
43 完璧な王による完璧な断罪
私がシオンに駆け寄ったのと同じように、国王陛下と王妃様はローレル殿下に駆け寄っていた。
「ローレル、大丈夫なのか⁉」
「あなたが負けるなんて具合でも悪いの?」
ローレル殿下は満面の笑みを浮かべている。
「大丈夫ですよ。今日は体調がすぐれませんでした」
「そうだったのか、無理をさせてすまない」
そんな会話を聞いた私は、この人たちは、本当にシオンに少しの興味もないのねとあきれてしまう。
一瞬だけローレル殿下がこちらを見たけど、すぐに国王陛下に向き直った。
「陛下。以前から一刻も早く、私に王位を譲りたいと言っていましたね?」
「ああ、ローレルになら今すぐにでも王位を譲ってやろう」
「では、今すぐに、私に王位を譲ってください」
驚きに目を見開いたあと、国王陛下は顔をほころばせた。
「ようやく決心してくれたか! いいだろう。今すぐ王位を譲ろう」
国王陛下が指示すると、すぐに侍従が仰々(ぎょうぎょう)しく書簡を運んできた。
「わしが、この日が来ることをどれほど待ち望んでいたか。準備はすでにできているぞ」
書簡を受け取った国王陛下は、「ローレルよ。ここに署名しなさい。戴冠の儀などはあとで行おう」と嬉しそうだ。
ローレル殿下もニコニコしながら書簡にペンを走らせた。
国王陛下が書簡を皆に見えるように掲げると、その場にいた宰相や騎士たちは「ローレル王の誕生だ!」と喜ぶ。
国王陛下が立ち上がり空けた玉座にローレル殿下が座った。たった今、王になったばかりなのに、その貫禄に圧倒されてしまう。
先代王妃様も「これでこの国は安泰です」と涙ぐんでいる。
そのやりとりを私は冷めた目で見ていた。シオンの手を握ると、嬉しそうにシオンが微笑んでくれる。
私の母が「もうこの国には見切りをつけるしかないわね」とため息をついた。それなら、シオンと一緒に別の国で暮らすのもいいかもしれない。
ローレル殿下を讃える騎士たちが「国王陛下、何かお言葉を!」と言ったので、ローレル陛下は玉座から立ち上がった。
「私は学園を卒業と同時に、このつまらない国を滅ぼしてやろうと決めていたが、リナリアのおかげで真実の愛に目覚めた。よって、今からこの国をより良くするための政策を行使する」
先代国王や先代王妃様、騎士たちがそろってポカンと口を開いた。しかし、それ以上に私は驚いている。
水を打ったような静けさの中、ローレル陛下の声が響いた。
「まず、私の父である、先代国王は国内で絶対的な支持を得ている私に王位を譲り、周辺諸国へ戦をしかけ侵略し、王国を帝国にすることを計画していた。私の愛おしいリナリアの住まう国の平和を乱す王族は見過ごせない。よって死刑」
先王の顔から血の気が引いたけど、誰も口を開かない。
「そして、母である先代王妃は、現宰相と不義の関係にある。一夫一妻制のこの国で、婚姻後に夫以外の男と密通することは重罪だ。かつ、私以外に先代王妃の血を継ぐ子どもが生まれる可能性を作り出すことは、私に対する反逆である。それは、愛おしいリナリアの未来を脅かすことでもある。よって死刑」
先代王妃様は真っ青になりながら、口をパクパクと動かした。
「先代王妃と密通した宰相は、母の力を利用し、自分の娘を私の妃にあてがい、より多くの権力を得ようとしていたため、この場で宰相の任を解く。そして、死刑」
宰相がガタガタと震え、その場から逃げ出そうとした。
ローレル陛下が「捕えよ」と言うと、騎士達が一斉に宰相を拘束する。
「この国を住みやすい国にするには、たくさんの愚か者を処罰しないといけないけど、今日はこのへんでやめようか」
先代国王陛下が「ローレル……お前は、いったいどうしてしまったのだ?」と震える声で尋ねた。
先代王妃様が「そうです。あなたは慈悲深く、優秀で誰よりも完璧だったのに……」と泣き崩れる。
「完璧な人間などいるわけがない。あなたたちは都合よく私に幻想を重ねていただけ。私はそれを利用して、好き勝手生きてきただけのこと。それに、もし私が完璧だというなら、私を生んだ両親であるあなたたちも完璧であるべきでは?」
「そんな……あんなにもあなたを愛してあげたのに……」
「先代王妃、あなたは確かに私を溺愛してくれた。だが、あなたの息子はもう一人いたでしょう? シオンを無視したあなたは、母として失格、そして、夫以外の男に抱かれたあなたは妻としても最低だ。そんな女から、完璧な王子が生まれるわけがない」
ローレル陛下はとても楽しそうだ。
「あ、そうそう。シオンやリナリアが集めた証言はすべて真実だ。私はずっとシオンのふりをして、暴力をふるったり、女遊びをしたりしていた」
玉座から降りたローレル陛下は、シオンに向かって深く頭を下げた。
「シオン、今まですまなかった。許してくれとは言わないし、別に許してほしいとも思わない。ただ、リナリアが君に謝ってほしいと願って証拠集めを頑張っていたから謝る。それに、シオンにもすごく楽しませてもらったから、面倒でつまらない王位は私が引き受けてあげるよ。シオンの名誉は必ず回復させる。これからはシオンの好きなように生きてくれ」
ローレル陛下の謝罪を聞いたシオンは、なんの感情も動かなかったようで淡々と返した。
「ローレル、おまえの謝罪なんて何の価値も意味もない。それに、私は私の名誉の回復なんてどうでもいいけど、このままじゃリナリアが悲しむから、ぜひそうしてほしい。あと、このクソみたいな王位を引き受けてくれてありがとう。私は今、生まれて初めてローレルが兄で良かったと思ったよ」
息子たちの会話を聞いた先代王妃様は「ウソよ!」と叫んだ。
「ローレル、あなたは完璧なの! そんなことをするはずがないわ! シオン……そうよ、シオンがすべて悪いのよ!」
シオンにつかみかかろうとした先代王妃様は、ギアム様にすばやく取り押さえられた。その光景を見たローレル陛下は楽しそうに口端を上げる。
「お母様、信じなくても結構です。私は性格がとても悪いので、これからはシオンの代わりに父上とお母様で遊びますね。お二人が『早く処刑してくれ』と泣いて叫ぶまで、一緒に遊んであげますよ」
先代国王陛下と先代王妃様がそろって青ざめたので、私は『この二人、やっぱりシオンがローレル殿下に酷い目に遭わされていたことを知っていたんだわ。知っていた上で、気がつかないふりをしていたのね』と確信した。
シオンは、「ローレル」と低い声を出した。
「なんだい? シオン」
「さっきから黙って聞いていれば、『真実の愛に目覚めた』だの、『愛しいリナリア』だのと、聞き捨てならない」
「ああ、そのこと?」
ローレル殿下は、少しも悪びれない。
殺気立つシオンが「もし、私からリナリアを奪おうと言うなら……」と言う言葉をローレルはさえぎった。
「心配するな。私のリナリアへの想いは、そういうのじゃないから。国王の権限で、シオンがノース家に婿入りすることも認めてやるよ」
驚くシオンを無視して、ローレル陛下は私にひざまずいた。
「リナリア。私にとっては、君だけが女性として特別で、それ以外はどうでも良いその他大勢なんだ。これって、私がリナリアのことが好きってことだよね?」
その言葉は、確かに前に私がローレル陛下に言ったことだった。
私が顔をしかめながら言葉に詰まっていると、ローレル陛下はうっとりとため息をついた。
「ああっ、リナリア! やっぱり君は最高だよ。お願いだから、一生私を嫌って気持ち悪がっていてね。それができるのは、君だけだから。特別な君だけが、私を王ではないただの男にしてくれる」
意味不明なことを熱烈に言われ、私はつい「……気持ち悪っ」と呟いてしまった。その言葉にローレル陛下がとても喜んだとき、勢いよく謁見室の扉が開いた。
「ローレル、大丈夫なのか⁉」
「あなたが負けるなんて具合でも悪いの?」
ローレル殿下は満面の笑みを浮かべている。
「大丈夫ですよ。今日は体調がすぐれませんでした」
「そうだったのか、無理をさせてすまない」
そんな会話を聞いた私は、この人たちは、本当にシオンに少しの興味もないのねとあきれてしまう。
一瞬だけローレル殿下がこちらを見たけど、すぐに国王陛下に向き直った。
「陛下。以前から一刻も早く、私に王位を譲りたいと言っていましたね?」
「ああ、ローレルになら今すぐにでも王位を譲ってやろう」
「では、今すぐに、私に王位を譲ってください」
驚きに目を見開いたあと、国王陛下は顔をほころばせた。
「ようやく決心してくれたか! いいだろう。今すぐ王位を譲ろう」
国王陛下が指示すると、すぐに侍従が仰々(ぎょうぎょう)しく書簡を運んできた。
「わしが、この日が来ることをどれほど待ち望んでいたか。準備はすでにできているぞ」
書簡を受け取った国王陛下は、「ローレルよ。ここに署名しなさい。戴冠の儀などはあとで行おう」と嬉しそうだ。
ローレル殿下もニコニコしながら書簡にペンを走らせた。
国王陛下が書簡を皆に見えるように掲げると、その場にいた宰相や騎士たちは「ローレル王の誕生だ!」と喜ぶ。
国王陛下が立ち上がり空けた玉座にローレル殿下が座った。たった今、王になったばかりなのに、その貫禄に圧倒されてしまう。
先代王妃様も「これでこの国は安泰です」と涙ぐんでいる。
そのやりとりを私は冷めた目で見ていた。シオンの手を握ると、嬉しそうにシオンが微笑んでくれる。
私の母が「もうこの国には見切りをつけるしかないわね」とため息をついた。それなら、シオンと一緒に別の国で暮らすのもいいかもしれない。
ローレル殿下を讃える騎士たちが「国王陛下、何かお言葉を!」と言ったので、ローレル陛下は玉座から立ち上がった。
「私は学園を卒業と同時に、このつまらない国を滅ぼしてやろうと決めていたが、リナリアのおかげで真実の愛に目覚めた。よって、今からこの国をより良くするための政策を行使する」
先代国王や先代王妃様、騎士たちがそろってポカンと口を開いた。しかし、それ以上に私は驚いている。
水を打ったような静けさの中、ローレル陛下の声が響いた。
「まず、私の父である、先代国王は国内で絶対的な支持を得ている私に王位を譲り、周辺諸国へ戦をしかけ侵略し、王国を帝国にすることを計画していた。私の愛おしいリナリアの住まう国の平和を乱す王族は見過ごせない。よって死刑」
先王の顔から血の気が引いたけど、誰も口を開かない。
「そして、母である先代王妃は、現宰相と不義の関係にある。一夫一妻制のこの国で、婚姻後に夫以外の男と密通することは重罪だ。かつ、私以外に先代王妃の血を継ぐ子どもが生まれる可能性を作り出すことは、私に対する反逆である。それは、愛おしいリナリアの未来を脅かすことでもある。よって死刑」
先代王妃様は真っ青になりながら、口をパクパクと動かした。
「先代王妃と密通した宰相は、母の力を利用し、自分の娘を私の妃にあてがい、より多くの権力を得ようとしていたため、この場で宰相の任を解く。そして、死刑」
宰相がガタガタと震え、その場から逃げ出そうとした。
ローレル陛下が「捕えよ」と言うと、騎士達が一斉に宰相を拘束する。
「この国を住みやすい国にするには、たくさんの愚か者を処罰しないといけないけど、今日はこのへんでやめようか」
先代国王陛下が「ローレル……お前は、いったいどうしてしまったのだ?」と震える声で尋ねた。
先代王妃様が「そうです。あなたは慈悲深く、優秀で誰よりも完璧だったのに……」と泣き崩れる。
「完璧な人間などいるわけがない。あなたたちは都合よく私に幻想を重ねていただけ。私はそれを利用して、好き勝手生きてきただけのこと。それに、もし私が完璧だというなら、私を生んだ両親であるあなたたちも完璧であるべきでは?」
「そんな……あんなにもあなたを愛してあげたのに……」
「先代王妃、あなたは確かに私を溺愛してくれた。だが、あなたの息子はもう一人いたでしょう? シオンを無視したあなたは、母として失格、そして、夫以外の男に抱かれたあなたは妻としても最低だ。そんな女から、完璧な王子が生まれるわけがない」
ローレル陛下はとても楽しそうだ。
「あ、そうそう。シオンやリナリアが集めた証言はすべて真実だ。私はずっとシオンのふりをして、暴力をふるったり、女遊びをしたりしていた」
玉座から降りたローレル陛下は、シオンに向かって深く頭を下げた。
「シオン、今まですまなかった。許してくれとは言わないし、別に許してほしいとも思わない。ただ、リナリアが君に謝ってほしいと願って証拠集めを頑張っていたから謝る。それに、シオンにもすごく楽しませてもらったから、面倒でつまらない王位は私が引き受けてあげるよ。シオンの名誉は必ず回復させる。これからはシオンの好きなように生きてくれ」
ローレル陛下の謝罪を聞いたシオンは、なんの感情も動かなかったようで淡々と返した。
「ローレル、おまえの謝罪なんて何の価値も意味もない。それに、私は私の名誉の回復なんてどうでもいいけど、このままじゃリナリアが悲しむから、ぜひそうしてほしい。あと、このクソみたいな王位を引き受けてくれてありがとう。私は今、生まれて初めてローレルが兄で良かったと思ったよ」
息子たちの会話を聞いた先代王妃様は「ウソよ!」と叫んだ。
「ローレル、あなたは完璧なの! そんなことをするはずがないわ! シオン……そうよ、シオンがすべて悪いのよ!」
シオンにつかみかかろうとした先代王妃様は、ギアム様にすばやく取り押さえられた。その光景を見たローレル陛下は楽しそうに口端を上げる。
「お母様、信じなくても結構です。私は性格がとても悪いので、これからはシオンの代わりに父上とお母様で遊びますね。お二人が『早く処刑してくれ』と泣いて叫ぶまで、一緒に遊んであげますよ」
先代国王陛下と先代王妃様がそろって青ざめたので、私は『この二人、やっぱりシオンがローレル殿下に酷い目に遭わされていたことを知っていたんだわ。知っていた上で、気がつかないふりをしていたのね』と確信した。
シオンは、「ローレル」と低い声を出した。
「なんだい? シオン」
「さっきから黙って聞いていれば、『真実の愛に目覚めた』だの、『愛しいリナリア』だのと、聞き捨てならない」
「ああ、そのこと?」
ローレル殿下は、少しも悪びれない。
殺気立つシオンが「もし、私からリナリアを奪おうと言うなら……」と言う言葉をローレルはさえぎった。
「心配するな。私のリナリアへの想いは、そういうのじゃないから。国王の権限で、シオンがノース家に婿入りすることも認めてやるよ」
驚くシオンを無視して、ローレル陛下は私にひざまずいた。
「リナリア。私にとっては、君だけが女性として特別で、それ以外はどうでも良いその他大勢なんだ。これって、私がリナリアのことが好きってことだよね?」
その言葉は、確かに前に私がローレル陛下に言ったことだった。
私が顔をしかめながら言葉に詰まっていると、ローレル陛下はうっとりとため息をついた。
「ああっ、リナリア! やっぱり君は最高だよ。お願いだから、一生私を嫌って気持ち悪がっていてね。それができるのは、君だけだから。特別な君だけが、私を王ではないただの男にしてくれる」
意味不明なことを熱烈に言われ、私はつい「……気持ち悪っ」と呟いてしまった。その言葉にローレル陛下がとても喜んだとき、勢いよく謁見室の扉が開いた。