ヤンデレ王子様の甘くて重い歪んだ溺愛。
「心。驚かせてごめんなさい。色々とあって、今日だけ帰ってきたの。」

「う、ん……」


色々あって……?その色々は、なぁに……?


「ずっと心には話していなかったのだけれど、あなたには、婚約者がいるの」


……婚約、者……?


「な、なに言ってるのお母さん……!?」


婚約者いるって、なにそれ……!?


「けど、それは正式なものではないわ」


横からそう言った、さくくんのお母さん。
美雪さんだ。


「ど、どういうこと、ですか……?」


っていうか……この流れじゃ、まるで私とさくくんが婚約者、みたい……。


「……咲人と心ちゃんは正式には婚約をしていなくて、いまからするところ、なの」

「いまから……?」


私にはなにも聞かされていなくて、自分の意志も聞いてもらえなかったのに……?


「ね、ねぇさくくん、どういうことなの……?」

「どういうこと?心、忘れちゃったの?小さい頃に結婚しようって、約束したじゃん」


小さい頃に……?


『心、僕は心のこと、すっごく愛してる。だから、結婚してくれる?』

『うん!私もさくくんのこと、だーいすき!』


そんな記憶が蘇った気がした。


……でも、それは小さい時のことで。


「……まさか、それを無効化しようとなんて考えてないよね?心は僕のこと、嫌いなの?」

「ち、ちがうけど……婚約は別だよ……!!」


さくくんだって、そんなのきっと不本意だろうし……。
「あ、あの!」


ガタッと物音を立て、立ち上がる。


落ち着け、私……。


「想いがないのに、婚約なんて嫌、です……!!」


そもそも、御曹司のさくくんが私と結婚して利があるはずがない。


いくら好きだからとはいえ、婚約はちょっとちがう気がする。


「……心は、僕のこと嫌いなの?」

「き、嫌いじゃないよ!むしろ、大好きだよ!けど……」


やっぱり、理由もわからずに婚約なんて、嫌、だ……。


……もしも、さくくんが私のことを想っててくれて、婚約まで至っているのであればまた話は別かもしれない。


けど、きっとそんな夢見たいなことはないんだろう。


さくくんにとって、私は妹みたいなものだと思うから。
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