ヤンデレ王子様の甘くて重い歪んだ溺愛。
「ねぇ心、こういう時なんて言えばいいかわかるよね?」
「っ……」
好きだとは、思っているものの……こういうことになるたびに、さくくんへの好きという気持ちが、薄れていくような気がする。
「ごめんな……さい……」
それを言えば、彼は笑顔を取り戻す。
そして、ぎゅっと私を抱きしめてきた。
「ふふっ、それでいいの。よしよし、心だから許してあげる」
複雑な感情に揉まれながら、私は下唇を噛み締めた。
家を出て、さくくんのおうち専属の車がお迎えに来る。
私は申し訳ないけれど、さくくんが一緒に行こうと言ってくれるのでお邪魔させてもらっていた。
「……はぁ……」
車の窓から外を見て、小さなため息を溢す。
ゆうちゃんのことで、スカートのことは一件落着したけど……さくくんは、どうしてこんなに私に口出ししてくるのだろう……。
「心、今日は一緒に帰れるからね」
「わ、わかった……」
今日はって言うか、今日も、だと思うけど……。
「いい?心。変な男が来たらすぐに僕に連絡するんだよ?」
「わ、わかってるよ!」
毎日毎日そう言ってるけど、すぐ覚えられるし……!
本当に、さくくんは過保護なんだから……。
なんやかんやで学園まで着き、車から降りて共に教室へ向かう。
さくくんは毎日私を教室まで送ってくれる。
……いつものようにともに廊下を歩く。
珍しいことにさくくんはとってもカッコいいのに校内では女の子に寄り付かれたりしない。
とっても不思議だけど、なにか裏がありそうで怖いから聞かないことにしている。
自分のクラスに着き、扉を開ける。
「おはよう心!」
「玲奈ちゃん!おはよう!」
真っ先に私に話しかけてくれたのは、ウルフヘアが似合う琳堂玲奈ちゃんだった。
えへへ……朝から声かけてもらえて嬉しいな。
玲奈ちゃんとは小学生の頃からの親友で、中学は別れちゃったけど高校で再会をした。
「送ってくれてありがとう、さくくん」
「ううん、またあとでね」
ポンと私の頭を一撫でして、自身の教室へと行ってしまった。