ヤンデレ王子様の甘くて重い歪んだ溺愛。
「……心」

「ん?どうしたの?」


抱きしめる腕に力を込めたさくくん。


「心って、好きな人とかいるの?」

「……ふぇ?」


好きな、人……?


「なんで、急に……?」

「ほら、あの……カラオケで心の前に座ってたヤツとか、好きなんじゃないかって」


さくくんの声色は震えているように感じられた。


……そんなこと、あるはずがないのに。


いつだって、結局さくくんのことを好きになる。


やっぱり私の王子様じゃない、そう思ってもまた好きになる。


「ちがうよ」

「……!そっ、か……よかった……」


本当にホッとしたようにそう言ったさくくん。


……なんだか珍しいな。さくくんが取り乱すなんて。


「……じゃ、じゃあ……!逆に、さくくんは、好きな人とか、いるの……?」

「心はそんなことに興味があるの?」

「う、うん……」


そ、そんなことって……。


「……僕はね。ふふっ、秘密」

「秘密……?」

「うん。あ、でも心が教えてくれたらいいよ」

「っ……!や、やだよ!」


それって、告白するってことに、なっちゃうもんね……!

心臓の音が加速し始めて、ゆっくりと深呼吸する。


「……それは、いるってことだね?」

「……え?」


急に真顔でどす黒いオーラを出し始めたさくくん。


「な、なにか誤解が……!?」

「誤解?ねぇ、誰?」

「い、言いたくないよ……!!」


なんだか消されちゃいそうな雰囲気だけど、こんなところで告白なんて嫌だし、
そもそも……さくくんのこと、本当に本当に好きなはず、なのに……。


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