虐げていた姉を身代わりに嫁がせようとしましたが、やっぱりわたしが結婚することになりました
 ゆっくり過ごしてくれ、とは言われたものの、荷解きや王宮内の案内などであっという間に結婚式当日となった。グランディエ国の王家が代々式を挙げる大聖堂でミランダはディオンに愛を誓った。

(ドレス、なんとかなってよかったわ)

 ジュスティーヌのために用意していた花嫁衣装を着用するわけにもいかなかったので、急遽母のおさがりを譲ってもらったのだ。

 母は新たに作ることを希望したが、「式に出席できないお母様と同じドレスを着たら、見守ってもらっている気持ちになりますから」と切なげに言えば、涙ぐんで了承してくれた。

 やや古いデザインだが、大切に保管されており、また手間暇とお金を贅沢に費やしただけあって、目立って傷んでいるところはなく、侍女や貴族たちもみな褒めてくれたから問題ない。

(お世辞なのかもしれないけれど)

 花婿であるディオンはミランダを見て、一瞬眉をひそめていたから似合っていなかったのかもしれない。しかし口では「綺麗だ」と言ってくれたので、気にする必要もない。

 大聖堂での儀式が終わると、長い長い宴が夜まで続き、そこから湯浴みをして、初日に宛てがわれた部屋とは違う、夫婦の寝室で待つよう告げられた。

 これから花嫁と花婿にとって、一番大事な義務があるのだが――

(どうしましょう……すでにもう、体力の限界だわ……)

 世の中の夫婦は本当にここから初夜を成し遂げたというのか。

(少しだけ……たぶん部屋に訪れたら、起こしてくれるはずだから……)

 それまで目を閉じて疲れを癒していようと、ミランダはふかふかの寝台に身を沈めてしまった。
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