きみは永遠の小悪魔【完】
女の子として失格の、だらしのない寝相を晒した私を覗き込むように、濃いブラウンアーモンドアイが垂れた。

千景くんが、首をゆらりと傾げると黒のロングピアスが揺れる。その隣には、シルバーのリングピアスとスタッドピアスが2つと、軟骨にまで付いている。

ド一軍しか許されないピアスの種類だ。

初めて髪を染めた昨年の夏「真似すんなや」と怒られた、千景くんのキャラメルを乗せた色が、半年会わないうちに柔らかいミルクティベージュに変わっている。


「あっ。チカじゃん」

「こんばんは〜〜御曹司様がこんなところで何してるん?」

「社会見学」

「え。どゆこと?」

「うちのグループ会社。バイトしてんだわ」

「ああ。そういうことね。バイトのこと“社会見学”なんて、わかりにくい例えすんなよ」

「察しろや」


気怠そうに視線を外し、奏太くんに毒づいたと思えば「つか、何これ」と、話題を変えて私の頬をむぎゅと右手で簡単に掴んだ。


「お前ら、ふみ連れ回すのやめろ」

「は〜い。千景くんごめんね〜」

「誠意こもってないだろ」

「誘ったのは周子だし」

「同罪だろが」

「はいっ、すいませんでした」


顔はピカイチ100点満点の完璧なのに、口の悪さは通常運転。周子ちゃんには目もくれず、相変わらずの塩対応。メンタル強強の周子ちゃんだから良いものの、他の子だったら心が折れてると思うの。

3人の掛け合いを眺めていると、アルコールが微量に残った頭が、私に危険信号を送る。

『ふみが今見てる光景は夢じゃないよ』と。
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