きみは永遠の小悪魔
「おやすみなさい……で、ございます」と、たどたどしい日本語で、もう一度、千景くんにさよならの挨拶をした。


「頭ぽわぽわする」

「アルコール3%で酔ってる人が何言ってるんですか。さすがお子様ですね」

「くるしい」

「わかってると思いますけど、車の中で吐くのだけはやめてください。吐くなら今ここでお願いします」

「……………むぅ。鬼」


絶対に吐いたりしないもん。
※人様に多大なる迷惑をかけるのはやめましょう


「淑女は吐きませんっ」

「いつから淑女だったんですか」

「生まれたときから……って、お姉ちゃんが教えてくれたの」

「どんな英才教育受けてんだよ」

「……(笑ってくれた)」


声を少し抑えて笑う彗に胸がぎゅんとなってしまった。

今の私は茹でタコの酔っ払い、お酒の匂いを纏って、綺麗に内巻きにした髪型も鏡で確認はしてないけれど、崩れてると思うの。そんな最悪のコンディションを好きな人に晒しているなんて。

恋する女の子失格である。


「うう…(恥ずかしすぎるよ。…フードも被っちゃえ!)」


帰りの支度もばっちり決まり、子どものように彗の背中にぴたりとくっついた。

視界の隅っこで、周子ちゃんと奏太くんが「おやすみ〜気をつけてね」と、仲良く口を揃えるのが可愛くて、私も顔の横で小さく手を振る。

千景くんは、私たちから目線を外してつまらなさそうだ。「……ほんとに、ほんとに帰るね」とぶつけたとき、千景くんに引き留められた。


「あんたが無茶してるせいで、ふみが危ない目にあってるらしいけど」
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