きみは永遠の小悪魔【完】
アルコール度数3%の甘いサワーを飲み干した。

視界はぼんやり、ふわふわ舞い上がる。
体もゆっくりと熱を帯びていく。

ガヤガヤと騒がしい居酒屋の一室で、だし巻き玉子を運んできた店員のお姉さんに、グラスを渡して「はちみつレモンください」と追加注文した。


久世(くぜ)ふみ、20歳。

お酒の飲み方も、限界も知らない久世財閥の次女です。


「ふーみー!何杯飲んだ?」


同じ大学に通う周子(しゅうこ)ちゃんが、飲みかけのグラスを片手に、私の隣に腰をおろした。
ハイトーンに染まったベージュカラーのショートヘアが眩しくて、瞳がちかちかとする。

私は首を横に傾げた。
周子ちゃんと正反対、深いチョコレートブラウン髪が、鎖骨に触れた。


「……まだ、さん(いや、さっき頼んだから、4杯目かなあ)」

「ペース早いなあ。大丈夫?無理せられんよ」


進学を機に、地方から都会に上京してきた彼女が紡ぐ阿波弁は、耳にすっと溶け込んで心地良い。

口調も柔らかくてゆったりとしているから尚更、心をくすぐられるんだ。


「ほなって…話せる子、周子ちゃんと奏太(かなた)くんしかいないもん(阿波弁うつった……)」

「“ほなって”ここ、心理学科の飲み会やもん。ふみ、どこの学科だっけ?」

「文学部 文化財学科」


ぽつりと、属する学部を長々と述べたら、周子ちゃんの黒曜の猫目がすっと細くなった。
< 2 / 98 >

この作品をシェア

pagetop