きみは永遠の小悪魔
浅い微睡を何度繰り返したのでしょうか。

———ふみさんが思ってるより、惚れ込んでますよ

溶けるほどの甘ったるい声が耳奥を撫でたの。

———大好きに決まってるじゃないですか

肌を掠める指先の温度も、優しく塞がれた唇の熱も、愛おしいほど体に染み付いてる。

———…ふみ

「……んぅ〜〜」

彗に“ふみ”と呼ばれるくすぐったさに、心がころんと転がって、舞い上がっちゃう。

———ふみ、おいで

ほらね、また落ち着いた声音で引き止められた。敬語じゃない方が好きだなあと、嬉しくなって頬を緩ませる私に、彼の美麗な顔が近づく。

「わわっ」って、小さな声が落ちた。彗が、揶揄うようにフッと笑うものだから、私は目を瞑って準備万端を装うけど、


「………も、キスはおなかいっぱいで……す、」


刺激の強さに観念した。と、鼻先がくっついたところで瞼が開いた。
スマホのアラームが頭上で鳴り止まない。


「…………………ほんまに、何やっとるんだろ」


目覚めの第一声は、周子ちゃんから教わった方言である。

桜色のカーテンの隙間から溢れる、暖かな日差しを浴びた体を、ゆっくりと起こした。

念のため、瞼をも一度閉じてみる。
すると、先ほど夢で感じた二人の距離感、声色が私の意識を奪い尽くすものだから、慌てて頬をつねったんだ。


「やらかしてもーた」


いかがわしいことは、決してなかったです。
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