きみは永遠の小悪魔【完】
「ふみ、ごめんな。もっかい教えてもらっていい?」

周子ちゃんから困惑気味に質問返しをされた冬の午後。出席さえしていれば、単位をもらえることで有名な、ゆる〜いドイツ語の授業終わりの出来事だった。

手入れの施された綺麗な眉毛を下げて再び問う。


「御曹司と“なんだった”っけ?」


事の始まりは数分前。講義室の机で寝ている彗をじいっと飽きることなく、見つめていた。

いつ起こそうかな。もう少しだけ、このままでもいいのかな。

両手で頬杖をつきながら、幸せな悩みを宙に浮かべていた私の隣で、大きな伸びをした周子ちゃんが「あ。そうだ。御曹司とのケンカはどうなったん?」と尋ねたの。

「仲直りしました」そう述べると、周子ちゃんは瞳をぱちぱちさせたのです。


「千景くんと仲直りしたの。昨日はご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」

「「はやっ」」


事実は変わらないので、も一度同じことを言う。

今度はふたつの声が鼓膜に響いた。前の席に座っていた奏太くんが、振り返り際に“らしくない”大きな声を立てたのだ。


「昨日の今日で?」
「久世さん、ほんと?」


ほぼ同時に喋るものだから答える隙がなかった。
私が頷けば二人は難しいかんばせで口を噤んだ。

どうやら怪しまれてるみたいです。
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