きみは永遠の小悪魔【完】
「うわっ。まじかよ(“クソむかつく”って吐いて帰ったのに)」

「仲良いんか悪いんか、ようわからんなあ」


寒い冬でもアイスコーヒーを好む周子ちゃんは、ストローの先に口を付けて明るく笑った。

奏太くんはすかさず「今は笑えるけどさぁ。昨日はオレの心臓止まりかけたからね。いろんな意味で」と息を吐きながら、リュックの上で突っ伏せていた小さな顔を持ち上げる。

猫目がちな二重をすっと細めた。


「なんだよ、チカのやつ。バイト交代すんのやめよーかな」

「なにかあったの?」


周子ちゃんの肩越しに聞くと、手の中のスマホを私に差し出した。

奏太くんは言うの。「体調悪いらしいよ。チカどんな感じだった?」って。

曇りのない清涼な瞳を向けられたものだから「千景くん、やっぱり風邪引いてるんだ」と、面食らってしまい、独り言を落としてしまった。

すると、奏太くんは両頬に空気を溜め込んでから一回窄めて。気まずそうに、私から視線を泳がせた。

ぐいっと目の前に押し出される画面を覗き込んだ先。そこには、千景くんからのメッセージが時系列に並んでいた。

ひとつずつ目で追いながら読んでいく。


《低気圧でしぬ》
《頭いたい》
《熱出た》
《むり》
《シフト代わって》


「重症やなぁ」

「いろんな意味でね」

「本人の前では絶対言えんやつやわ」
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