きみは永遠の小悪魔【完】
違うかな?勘違いだったら恥ずかしいな。

内心、首を傾げながら不安になる。その先の答えを知りたい気持ちに駆られ、しどろもどろに言葉を探した。


『ちがう……?』


こんなこと聞くなんて、ほんとに私はずるい子。

睫毛の上にかかる前髪を優しく攫われた。さらりと溢れる前髪の隙間から、熱に濡れた彗の瞳と私の頼りなく揺れる瞳が重なり「けい、」と、名前を呼んだ。続きを言いかけたとき、少し低めの音声に閉じ込められた。


「せいかい」

「!?(ち、千景くんに敵意を!?)」

「大人気なくて悪かったですね」


千景くんには子どもの頃から何かにつけて意地悪を言われていたので、大人になった今でも、顔を合わせれば苦手意識が勝ってしまい、上手く喋れない。

『元婚約者』とは名ばかり。お互い恋愛感情なんてなければ、特別仲が良いわけでもないのに。

彗が気にするんだ。

「クソ。収まんねー」と無愛想に投げつける。むすっと唇を閉じて、不機嫌な顔色を貼り付けた。彗の言葉や仕草に胸が優しく響いた。

ごめんなさい。千景くんがしんどいときに、こんなこと思う私はおかしいの。


「(今日の彗は素直で可愛い)」

『ぎゅって、していいですか』

「は?」


壊れているし、どうかしてるんだ。


「ン。ほら、こっちおいで」

オレンジ色の陽光が傾き始めた。ほんのりと淡い暖色を灯す車内で、両手を広げる彗に「…おじゃまします」と言ってから、控えめに身を委ねた。

私の鼓動はどくどくと早まる一方なのに、彗の鼓動は静かに一定してる。
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