きみは永遠の小悪魔【完】
送迎だけじゃなく、パーティーの警護もするみたい。

「人手が足りないらしいんで」そう、電話口で彗は無機質に淡々と喋っていた。

「超ハードスケジュールだ———…ね」

目を擦りながら、眠りに落ちる前のお話のこと。

彗が来るのを待ち遠しく感じる。時間はゆったり流れるのに、心はたくさんの準備に追われて忙しなくあたふたするの。

ポーチから手のひらサイズの小さな鏡を取り出して前髪を整えたり、薄づきのピンク色のリップを塗り直す。良い匂いのするハンドクリームはたっぷりと付けて。

うん。ふんわり結った三つ編みは崩れてない。

日々の可愛いに抜かりなく、です。

センターに分けた前髪の毛先を無駄に気にして、くるんと触っていたらスマホの着信音に呼び出された。

勢いよくボタンを押して耳に当てると「ふみさん」と、低い声に撫でられ、胸が鳴る。


「はいっ。ふみです」

挙手しそうな勢いと、舞い上がる淡いふわふわの声で伝えた。

「知ってます」

と、至って普通の反応で返された。

「寝てました?」

「起きてます」

「勉強は捗りましたか」

「……もちろんです」


少し嘘が含まれてる。ちょっとだけ図書館でうとうとしてたの。瞼を閉じた瞬間もあったけど、昨日のような残念な寝落ちはしてない。

ふ、と向こうで彗の笑う声を拾った。どうやらバレてるようで、やられたと言った感じに私の口角は、む、と上がる。


「今から行きます」

「うん。急がないでゆっくり来てね?」

「努力します」


通話が切れる寸前、彗の周りから騒がしい音や声が聞こえた。
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