きみは永遠の小悪魔【完】
今からってことは20分くらいかかるかな。彗にコーヒー買ってくる時間あるよね?

…この近くに新しいカフェができたって周子ちゃんから聞いたから、行ってみようかな。

そう決めたら、早速、スマホのマップを開く。方向音痴が発揮して、画面に表示される道順と睨めっこが始まった。

ううーん。右、左。……左?とりあえず左に歩いてみよう。

スマホ片手に前後を何回も振り返っていると、聞き覚えのない声に引き止められた。


「ふみちゃん」


エ…。どなたですか。

視界に入るのは、私に向かって瞳を細めながらひらひらと手を振る男の人。

戸惑う頭の中はハテナである。


「この間の飲み会ぶりだね」

「…………こんにちは」


困惑気味の私は「はじめまして」とは言えず、当たり障りない挨拶で誤魔化す。

人見知りも発動した。斜め下に視線が落ち、ぎゅっとスマホを握る指先に力が入る。


「オレ、奏太の同期。ふみちゃんの斜め前に座ってたんだけど、忘れちゃった?」

「…………(ゔ。ごめんなさい、私は覚えてないです)」


心を読まれたみたいに、さらりと言われた。


「覚えてなくて当然。あの時、めちゃくちゃ人多かったし、みんな騒いでたもんな」


かく言う私も酔っ払ってました。
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