きみは永遠の小悪魔【完】
「その人いつ来んの?」

「後、五分もすれば来ます、と思います」

「確定じゃないのか。未定なんだね」

男の人の瞳の奥が、また、すっと細まった。

逃げるために用意した下手くそな嘘は見破られている。はっとした私は「……他の人を誘ってみてはどうですか。私はいいです」と、きっぱり断った。

私にしては強い口調で跳ね返したはずだけど、向こうには効果はないようで、離したはずの距離はいつの間にか詰められており、びくっ!と肩が上擦った。


「可愛い子と行く方が楽しいから、ふみちゃんがいいな。強気なところもいいね」

にこっと口角を上げて笑う。

「もしかして、ふみちゃん犬派だった?」

「…………」

どっちも派です。


怖くなった私は、男の人を振り切って早足に歩いた。振り返らず、記憶の中にあるマップの『左』だけを頼りに歩き続けたけど、男の人の足音が聞こえる。


「時間が気になんなら、カフェにしよっか。美味しいケーキの店知ってるんだ」

こんなに無視してるのに諦めてくれないんだ。

「ごめんなさい。門限があります」


最後には走り出した。が、すぐに息が上がって立ち止まったの。けほっと咳き込んだ。

視界に男の人の影が薄らと映り、俯いた顔を持ち上げた。


「マジ?ほんとにお嬢様なんだ。今どき門限ってあるんだね。へぇ〜。家まで送って帰るよ」

ヤダ、ヤダ。タバコ臭い。き、気持ち悪いーー!
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