きみは永遠の小悪魔【完】
門限が憂鬱だと感じるのは今日が初めて。
ふう、と力なく吐いた息が宙を舞う。

欲張りを言うなら彗と一緒にご飯を食べたいし、デザート付きで、コンビニのアイスも半分こしたい。仕事に行くなら、私もパーティーに着いて行きます!って右手を挙げて宣言する。

だけどね「門限。帰らないと」そう言われたら、彗を困らせたくない私は頷くと思うんだ。

最近の彗は仕事が忙しいみたい。大学がある日の護衛はなくなり、しばらく送り迎えだけになっていたから、久しぶりに二人の時間を過ごすことができて、私はすっかり浮かれてしまったの。

ぺち、と両手で頬を軽く叩いた。

私たちは社会人と大学生。
働く大人と勉強中の子ども。

会えない日があることも、時間が制約されてることも仕方ないもん。

可愛くないことしたくないのに…彗にワガママを言おうとする私がいる。困らせたい私がいるんだ。

「彗と付き合えてじゅーぶん幸せ」と魔法の言葉を呟けば、いつも寂しさは薄れるのに上手く消化できない。

お姉ちゃんが教えてくれた言葉が、ふわ、と心の真ん中で転がった。


———ふみ。家のルールは破るためにあるんだよ?


はい。そうなのです。
今日のふみは悪い子になりたい。


「すいません。遅くなりました」

「おかえりなさい」


車のドアが開いて彗が戻って来た。
エンジンをかけシートベルトを締める彼に「彗。あのね」と、言い始めた途端「ふみさん」と呼ばれ、視線が向けられた。


「…っ」

こと、と私の首が小さく倒れる。

「まだ、付き合ってもらえますか」
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