きみは永遠の小悪魔【完】
カチッとシートベルトが外れる金属音に、耳の先が反応した。ゆっくり彗の背中に腕を回すと胸がくっついて、私の鼓動は、ことこととリズムを速めてく。


「今日の私は悪い子になりますね」

『悪い子記念日』の宣言だ。


彗が顎先を人差し指で簡単に掬い、美麗な顔が小さく斜めに角度を傾けて近づいてくる。

華やかさの香るシトラスの匂いに、きゅうっと鳴る甘やかな音。どくどく脈打つのは煩い心臓。

キスの合図を確かめる雰囲気、この瞬間が一番高鳴る。

鼻先を掠めたところで、抱きしめた腕をするりと首元に動かした。


「わっ、私からする」

「ん。どーぞ?」


彗が余裕そうに瞼を閉じた。

ちゅ、と彗へ可愛らしい口付けから始める。今度は吸い付くように、強請るように啄むキスを繰り返す。湿っぽい空気に水の音だけが跳ねる。

「…は、む……ぅん」力が抜けてく。掌が彗の柔らかい髪を撫でる。

彗も慣れた手つきで私の髪に指先を滑らせた。隙間を縫って耳朶を悪戯に触るものだから、ぴく、と体が震える。

熱を纏う吐息と体のふわふわで、頭がぼうっとするの。私から彗の唇をこじ開け、酸素と甘く溶かされた熱を分け合う。


「んぅーーーー〜〜……っ」

「ふみ。後、1回だけ」

「ン…んぅ」

も…はげし、くるしい。

「はぁ」と息継ぎでどうにか離れた。
うっすら瞳を開けると、彗とぶつかった。


「やばいな」
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