きみは永遠の小悪魔【完】

ふみと純粋な恋心

———ここなら人目も気にならないでしょ

彗と手を繋いでやって来たのは、駅前の大通りにある洋食店だった。

豪華なディナーが出される高級レストランや、お行儀良く、品良く座らないといけない場所でもない。

ゆっくりご飯を食べれるところなんだって、教えてくれたの。

肌寒い外から店内を覗った。

壁掛けにずらりと並んだ観葉植物。
海外の風景や有名な俳優のモノクロ写真。

視線を下げた先の深い紺色のテーブルクロスは、お洒落な雰囲気を醸し出して、家族連れの人たちや仕事帰りであろうサラリーマンの後ろ姿が、ちょこんと背伸びした瞳の中に映る。

扉の取手を彗が静かに引いた。慌てて隣にくっついた。


「いらっしゃいませ」

心地良い鈴のような声色に迎えられた。
瞬間、四つの音がそれぞれ異なる言葉を転がした。


「…あ」
「わ…っ」
「げっ」
「わー!」


ぱちぱち。

瞬きを二回、三回と繰り返す私の前で視界を奪った人は、元からついてた頬杖を更に深めた。形の良い唇は美麗な顔に不似合いな、むすっとした一文字に結ばれて。


「わぁ…」
「うわぁ」


また、お互いの声がぶつかった。


「奥のカウンター席にどうぞ」

「(カウンター!二人の横になるんだ)」


固まって動けないところ、柔和な店員さんに案内され、私はぺこっと頭を小さく下げた。

私と彗。

嬉しそうに手を振ってくれる奏太くん。
それから、つまらなさそうに視線を投げるのは、2ヶ月ぶりに顔を見る千景くん。

仲良く四人並びのカウンター席だ。
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