きみは永遠の小悪魔【完】
その言葉信じてもいい?

淡い期待を抱いたのも束の間の夢。

広々とした中庭で、課題に取り組んでいた私の前に、ある日突然、お姉ちゃんが連絡もなくやって来た。
隣にはスーツ姿の見慣れない男の人がいる。
ゆらりと首を傾げて瞬きをした。

……どなたですか?


———じゃじゃーん!今日から、ふみを守ってくれるボディガードの水無瀬彗さんです

———チッ


彗との出会いは、秋と冬の匂いが半分になった11月の中旬。金木犀の甘い匂いが、彼の纏う香水に混じって、私の鼻をくすぐったのを覚えてる。


———知り合いに紹介してもらったの。すっごく優秀な方なんだって


第一印象はこれっぽっちも良くなかった。

無愛想を貼り付けた美麗な顔は、元婚約者を彷彿とさせる。タチが悪いと感じてしまい、眉根がむっと寄ってしまった。


———ふみ?ぼうっとしてどうしたの?

さっき舌打ちした?気のせいじゃないよね。

———そうそう。ふみって可愛い人が好きだったよね。水無瀬さん、トイプードルに似て可愛いでしょう?

……似てるのはふわふわで、深いブラウンの髪だけだよ。トイプードルさんに失礼極まりないと思うの。

彼を前にして強張る私を他所に、お姉ちゃんはマイペースで、一人延々と喋り続ける。

ねえ、お姉ちゃん気がついて。水無瀬さんの目が冷めてるの。全然笑ってないんだよ。
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