きみは永遠の小悪魔【完】
艶のある黒髪は毛先に向かうにつれ、緩いウェーブを描いていて、レモン色のニットと細身な紺色のデニムから、スタイルの良さが否応なしでもわかる。

その綺麗な人は私のせいで、むす…と不機嫌になった千景くんへ、切れ長の二重を愛らしく細めて話しかけた。


「チカくんてバイトばっかしてるの?今の彼女ダルいん?」

「暇だと死ぬ病気にかかってる」

「なにそれ。意味わかんないよ」

うん、やっぱり私の勘違いじゃない。千景くんの知り合いみたいだ。

「彼女いねーよ」

「じゃあ、立候補していい?」

「募集してないから諦めろや」

「酷い〜〜。めっちゃ塩じゃん」


千景くんはするりと抜けた。

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのかな。

言葉の遊びがわからない私は、鼓膜に響く砂糖まみれの甘い声と、適当で素っ気ない返事の温度差に心の中で首を傾げるの。

ただ、今年も『ド一軍、塩対応、怖い、口が悪い』のハッピーセットを、千景くんが絶賛更新中であることだけは、承知したのです。

彗を見つめる向こう側で、千景くんの背中を瞳の端っこで捕まえる。

ゆっくり俯き加減になろうとする瞬間、華やかな微笑みを咲かす綺麗な人と、視線がぶつかった。

くすと笑われ、居た堪れなくなる。彼女は私を一瞥した後「またね」と千景くんに言い残し、お会計の方へ行ったんだ。
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