きみは永遠の小悪魔【完】
「よく来るんですか?」彼女が去ってすぐ、彗に話を振った奏太くんの、凛と澄んだ声に、ふわふわ彷徨う意識が引き戻された。


「ん?ああ、わりと。洋食が食いたくなったときとか」

「へえ、洋食好きなんですね」

「まあ」


鬼強メンタルの持ち主でもある奏太くんは、人懐こく、誰とでも打ち解けることができる人だ。

彗と顔を合わせるのも、面と向かって言葉を交わすのも、今日を含めて片手で数える程度なのに、もう距離を縮めている。


「……(彗の好きな洋食。オムライス、ハンバーグにグラタン…?今度、作ってみようかな)」


奏太くん、ナイスです。

彗が洋食好きだとの新しい情報を手に入れた私は、急いで心のメモ帳に書き込む。
《家に帰ったら、レシピを調べる》も追加。保存もばっちり。


「水無瀬さんだったら作ってくれる人いそうなのに———あ」


途中まで続けて、ぴたと言葉を切る。キッチンから出てきた店員さんを呼び止めた。

「すいません。注文いいですか?」そう、奏太くんが尋ねると「はい。お伺いしますね」と、感じの良い返事と笑顔が返ってきた。


「海老バーグ、ライス付きと、千景は?決まった?」

「大人のお子様プレート」


千景くんの口から、とっても可愛い言葉が、ころんと落ちたの。

《大人の お子様 プレート ?》

首を傾げる頭の上で、文字が円を描くように丸く並ぶ。最後にぴこん!と可愛い音が鳴った。

わぁっ。名前からして美味しそう。百点満点だ。


「いつも一緒のやつじゃん」

「うるせー」
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