きみは永遠の小悪魔【完】
褒められたような、なんだか他の意味も含まれてるような発言に、ほんの僅かに戸惑った。ありふれた咄嗟の返事が飛ぶ。


「あ、ありがとう」

「……」

「…千景くんはピアスが増えたんだね」

「ふみにムカつくたびに開けてる」

「えっ」

「じょーだん。間に受けんなや。そんなことしてたらピアスだらけだし」


さらっと酷いことを言う千景くんは、悪戯っぽい笑みを見せる。


「つか、兄貴に連絡しただろ」


別の話にすり替えられ、私は目線を泳がせた。

12月の出来事。
千景くんが熱っぽいと奏太くんから聞いた私は、お兄さん(三人兄弟の長男)に《千景くん、しんどいらしいです》とメッセージを送ったのだ。

千景くんが私の鼻先を軽く摘んだ。ぱっとすぐに離される。


「電話とメッセが煩くて無視したら、すぐにうち来たわ」

「わ…わあ〜。ソレハタイヘンデシタネ」


と、棒読みになってしまう私に、千景くんはフッと口元を柔らかくする。


「ポカリとゼリーだけで充分なのに、苦手な家事しようとするしな。誰かさんのありがたお節介のおかげで、俺は余計に具合悪くなった」

「お(お節介!)」

「…んだけど」


ゆらり、視線を這わせられた。私の空っぽな頭の中で、千景くんの喋っていた言葉が、光景として浮かび上がる。
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