きみは永遠の小悪魔【完】
お兄さんを鬱陶しそうに見る千景くんも、眉根を顰めてため息を吐く千景くんも、容易く想像できてしまったのだ。


「千景くん、しんどいって聞いたから」

「焦げたお粥作り直すくらいには元気だった」

「お粥焦げちゃったんだ(一体どんな作り方したんだろう)」

「どんな作り方したらそうなるんだよってな」

「だね」


首を横に倒して千景くんに返す。山型の弧を描いた眉は、知らないうちにふにゃと垂れていて。一拍置いて、も一度、私から続けた。


「“死にそう”って奏太くんに言ったでしょ?」

「あー……そんなこと言ったっけな」

「だから、その」


もごもご。言葉を選ぶ唇が開いたり閉じたりと忙しい。


「体調崩してるの知ってて無視すること、できないもん。…前にね、源が風邪引いてすごく苦しそうだったから千景くんも同じなのかなって思ったの」


冬が始まった頃の出来事。帰宅した源が、頬を赤らめて咳き込んでいたから「ねぇ、大丈夫?」って伝えたの。心配になった私は「顔も真っ赤だよ。熱、あるんじゃない?」と、すぐ休むように言ったのだけど、源は「これくらい、だいじょーぶ」と自室に戻った。

近々始まる、テストに向けての勉強をするらしいとメイドさんから教えてもらったので、すぐさま部屋を訪ねたの。案の定、源は部活後のジャージ姿のまま、ベットにうつ伏せて魘されていた。

それから、38.5度の高熱が下がるまで、つきっきりで看病したのだ。


「一人より、誰かが隣にいてくれる方が安心するから、連絡しました」
< 88 / 98 >

この作品をシェア

pagetop