きみは永遠の小悪魔【完】

きみは永遠の小悪魔

彼女の好きなところ、眉尻を優しく垂らして柔らかく笑う顔、甘いバニラの香り、一生懸命がたまに空回りしてしまう愛らしさ。

それから、いつも俺のこと考えてるのも可愛いなと思う。



『もっ、もしもし!ふみです』


耳に当てたスマホから、語尾が跳ね上がった声を拾う。『どうしたの?』と尋ねる言葉には、少し驚いたような、でも嬉しそうな色が含まれているのを感じる。

風呂上がりの濡れた前髪を掻いた。


「そろそろ、寂しがってると思って」

『わっ。バレてる』


冗談で言ったつもりが、素直な反応を一拍も置かずに返されると、三時間前に離れたばかりなのにもう会いたくなる。

「声、聞きたくて電話したんですけど」と、冷静を保ちながら本心を零した。


「悪い。……寝てた?」

『ちゃんと起きてます』

甘やかに微睡んだ声が寝起きに似ていたので、歯切れ悪く尋ねると、拗ねられてしまった。

———ふかふかの毛布の中にいたら寝ちゃうから、正座していろいろ考え事してたの

『それにね、私も彗の声、聞きたいなって思ってたんだ』


思わず、口元が緩んだ。


『ご飯食べて、お風呂入って、動画見てたでしょ?』


胸を張るふみが想像できた。
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